J1だけで行われていた大会にJ2も加えようというナビスコ杯の変更案が、一度は決まったかに思われたものの、再び振り出しに戻ったという。
 変更案を全面的に支持したというJ2側の論理も、反対したクラブが多かったというJ1の立場もわかる。J2側からすれば、目下のところ天皇杯で勝ち進むことでしか実現しないJ1勢との対決が、定期的に行えることになる。観客動員で大苦戦しているクラブが多いJ2にとっては、起死回生にも近いアイデアに見えることだろう。
 だが、J1の側からすると、J2との対決は魅力に乏しく、なおかつ現状システムよりもホームゲームが減ってしまうことを意味するわけで、これまた簡単に呑むわけにもいくまい。それぞれの側にはそれぞれの論理、事情があり、すべてのクラブが満足する解決策は見つかりそうもない。

 そもそも、ナビスコ杯の前身でもあるJSL杯は、イングランドにおけるかつてのリーグ杯に当たるものとして創設されたはずである。全国のすべてのクラブに出場する権利が認められているFA杯(=天皇杯)に対し、プロ・リーグに所属するチームのみで行われたのがリーグ杯であり、以前のナビスコ杯にJ2のクラブが参加していたのも、それゆえと言っていい。

 ただ、残念なことに、当時のJ1とJ2の間には、現在のJ1とJFLとの間にあるよりも大きな力の差があった。いまや、JFLであっても元日本代表選手が所属しているチームは珍しくないが、当時のJ2にそんなチームはほぼ皆無だったからである。番狂わせが起こらなければ、カップ戦の醍醐味は半減してしまうが、一定以上の力の差があると、ハプニングが起きる可能性はガクンと落ちる。番狂わせの少ない、しかも天皇杯ほどには新鮮な顔ぶれもないナビスコ杯が、いわゆる3大タイトルの中でやや下にランクされてしまったのも、やむをえない部分があった。

 しかし、いまのJ2はかつてのJ2とはずいぶん違う。横浜FCにカズが、札幌にゴン中山がいるように、ビッグネームを抱えるチームがあり、京都のように信じられないほどの若さを全面に押し出したチームもある。J2内の格差が大きすぎる嫌いはあるが、彼らのナビスコ杯参加によって、大会自体の注目度が高まるのはほぼ確実といっていい。

 浦和レッズがナビスコ杯決勝に進出した02年を境に、大会の注目度は一気に変わり、03年のレッズ優勝、さらには04年のFC東京優勝によって、少なくとも、決勝の舞台はプレミアム感を持つようになった。大会のさらなる発展を考えた場合、わたしは、J2を巻き込んだ変更案を推したいと思う。

<この原稿は11年9月29付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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