ディー・エヌ・エー(DeNA)社が買収を発表した横浜球団のGMに前東京ヤクルト監督・高田繁が就任することが内定した。北海道日本ハム時代の仕事ぶりが高く評価されたようだ。

 今ドラフトで巨人と相思相愛の関係にあった東海大の菅野智之を敢えて指名したことでもわかるように日本ハムはドラフトによる補強と2軍での育成を重視する球団だ。
 そのためにはスカウト、コーチ陣を束ねられる実力派のGMが当然、必要となる。現役時代は巨人で名外野手として鳴らし、コーチ、監督の経験もある高田を日本ハムがGMに採用したのはクリーンヒットだった。

 かつて、そのあたりのことを聞くと高田はこう答えた。
「ダルビッシュ有にしろ、中田翔にしろ、選手としての力があるかないか。そこだけを重視してきました。
日本ハムでいい仕事ができたのはオーナーの理解があったからです。指名した後で“オマエたちが指名したのに、何で獲れないんだ!”となったら信頼関係は壊れます。“この選手は指名しても獲れない可能性があります。それでも我々は行きたいんです”とお伺いを立てる。そのあたりの事前準備はしっかりとやっておきました」

 蛇足だが、巨人のGM制度がなぜ有名無実なのか。それは親会社の最高実力者がGMレベルで一度決めた話を“ちゃぶ台返し”してしまうからだ。ポストに就けた以上は任せなければならない。結果が出ない時はクビにすればいいのだ。要は「権限と責任」の問題である。
 そして、これは巨人に限った話ではない。もちろん横浜DeNA球団に対しても同じことが言える。

 日本ハムのGM時代、高田はITシステムをフル活用した。これには理由があった。
「日本ハムは1軍が札幌で2軍が千葉の鎌ケ谷と本拠地が遠く別れています。距離が離れているため、フロントを含めたスタッフたちの連絡を密にしなければならなかった。そこでパソコンを活用した。これにより2軍監督、コーチ、スカウトからのメールが毎日のように届きました。それを見るだけで2軍選手の状態、ドラフト候補のアマチュア選手のその時点での評価が手に取るように伝わりました」

 フロントと現場は、具体的にはどのような連携を図っていたのか。
「たとえば打撃コーチなら、“今、A選手にはこういう指導をしています。その結果、こうなりました”と報告を上げてくる。それにプラスして、月に一度は必ず2軍がある鎌ケ谷にフロントの誰かが出向いて選手の状態を確認しました」
 ちなみに育成システムを支えるソフトウェアの導入には約8000万円を要した。デトロイト・タイガースのフロントにいたGM補佐の吉村浩の提案だったという。
 DeNAは「モバゲー」などを運営するインターネットサービス業。ソフトウェアの開発はお手のものだろう。高田GMの「経験力」を借りて、球界に新風を吹き込んでほしい。

<この原稿は2011年12月4日号『サンデー毎日』に掲載されたものです>

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