第828回 WBC、ネトフリ独占の波紋
今年3月に開催される第6回WBCに出場する予定の大谷翔平に対し、ドジャースのデーブ・ロバーツ監督はテレビのインタビューで「指名打者のみでの出場なら問題ない」「翔平は日本代表の期間中、ブルペンで投げることになる。出来るのは、それくらい。実戦形式では投げないだろう」と話していた。
昨年6月に投手として663日ぶりに実戦復帰して以降、レギュラーシーズンで47イニング、ポストシーズンで20イニング1/3を投げたとはいえ、チームを預かる者として、故障リスクの高い春先に無理はさせたくないのが本音だろう。
日本代表監督の井端和弘は「(本人が登板を希望するなら)投手として考えなければならないし、逆に投げないなら投手を増やさなければならない」と思案を巡らせていた。
投げる投げないは別にして、大谷の参加表明を誰よりも喜んでいるのは、WBCを主催するWBCIだろう。MLBとMLB選手会が、大会を運営するために共同で設立した民間会社だ。
昨年8月、WBCIが米動画配信大手ネットフリックスと全47試合の独占配信契約を結んだと発表して話題を呼んだ。
配信事業に詳しい関係者によると、今回の放映権料は約150億円。第1回大会が約10億円、前回の第5回大会が約30億円だったことを考えれば、驚愕の数字だ。これにより、地上波での中継は消えることになる。
ネトフリの有料会員は世界で約3億人。日本では約1000万世帯。日本で人気のあるWBCを突破口に、国内市場を拡大したいとの思惑が透ける。
これを受け、五輪やサッカーW杯における主要な試合を、無料で放送することを義務付けた英国のユニバーサルアクセス(UA)権のような制度が、日本にも必要だとの声が出てきた。
だが、先述したようにWBCは、米国の一民間会社が主催するイベントに過ぎない。それを「公共財」と呼ぶのは、どうにも無理がある。UA権について議論する上での条件整備は、まだこれからだ。
<この原稿は2025年12月29日号『週刊大衆』に掲載されたものを一部再構成しました>
