那須川天心、2階級制覇王者のエストラーダに勝利 ~ボクシング~
ボクシングのWBC世界バンタム級挑戦者決定戦が11日、東京・両国国技館で行なわれ、同2位の那須川天心(帝拳)が同1位で2階級制覇王者のファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)に9ラウンド終了TKO勝ちした。
10ラウンド開始を控え、椅子から立ち上がりリング中央に向かった那須川に対し、エストラーダは椅子に座ったままだった。レフェリーは両手を交錯し、試合終了を告げる。相手陣営の棄権によって試合の幕は引かれた。
昨年11月、WBC世界バンタム級タイトルマッチで井上拓真(大橋)に破れて以来の再起戦だ。リベンジに燃える那須川にとっては、再戦への切符取り。勝てば5月2日に行なわれるタイトルマッチ井上拓真vs.井岡一翔(志成)の勝者への挑戦権を得られるからだ。相手はライトフライ級、スーパーフライ級でベルトを掴んだエストラーダである。こちらはバンタム級転向2戦目で3階級制覇の道を拓く。
那須川は進化の片鱗を見せた。スピードはあるが、足を使うというよりは地に足つけてガードを固めつつ、前進する。キーパンチとなったのが左ボディ。エストラーダが大きく後退する場面もあった。これまでは時折披露していたトリッキーな動きはない。よりボクサーに近付いた印象を受けた。4ラウンド終了時点での公開採点はジャッジ1人が39-37で那須川を支持。残り2人は38-38の同点。これをコーナーで聞いた那須川は「トラウマを思い返しそうになった」という。
それでも「前回の経験とか試合があったからこそ、今回こうやって乗り越えられたなと感じています」とペースを崩さなかった。6ラウンドには偶然のバッティングによりエストラーダがキャンバスに沈んだ。7ラウンドにはロープ際に追い込むも仕留めきれなかった。それでもダメージを着実に蓄積させた。8ラウンド終了の公開採点ではジャッジ3人が那須川を支持。そのうちの1人は79-73。ダウンや反則の減点さえなければ逃げ切れるポイント差だ。
ダウンは奪えなかったが、相手の心は折った。9ラウンドを終えると、エストラーダが棄権の意向をセコンドに告げ、トレーナー、コミッショナードクターに相談して試合を棄権した。試合後は緊急搬送。代わりに取材対応したファン・フェルナンデスプロモーターによると、棄権は脇腹の負傷が理由で「手を焼いたのはスピード。それをもってエストラーダを攻略した」と完敗を認めた。
井上拓真に負けてから、チーフトレーナーに就いた葛西裕一氏によれば「左ボディを磨いてきた」と、この試合のキーとなったパンチを振り返った。左ボディはエストラーダ対策ではなく「自分は誰にでも勝てるようにしてる」とのこと。「左ボディに限らずいろいろ全てのパンチを磨き上げた。今日も全部出ている。全部出てるけど繋がってないだけ。もっと繋がっていくと、もっと早い段階で(倒せる)チャンスも来る」
2階級制覇王者を破り、進化した那須川は「ボクシングを盛り上げたいし、必ずリベンジしたい」と次を見据える。視線の先は初黒星を付けられた井上拓真。「また新しい那須川天心を見せられる」と那須川も手応え掴んだようだった。
(文・写真╱杉浦泰介)