「もーてこい! もーてこい!」
 祭り神輿の鉢合わせ時の掛け声である。
 愛媛は今、勇壮で華やかな地方祭の季節。愛媛FCのホームゲームが行われるニンジニアスタジアムのメインスタンドでも大勢の子供たちによる「もーてこい! もーてこい!」の掛け声がこだました。
 今シーズンの愛媛FCのホームゲームでは、子供たち(小学生)を中心とした応援バスツアーが、いろいろな団体や組織によって企画・実施され、スタジアム内がたくさんの子供たちで賑わっている。

 有名なところでは、愛媛FC市民後援会「EHIMEオーレ!」による「母恵夢presents OLE!KIDS 夢バス」の応援ツアーが挙げられる。お菓子の製造販売で有名な株式会社母恵夢さんの協力によって定期的に行われており、さまざまな参加特典もついている人気企画である。愛媛FCのマスコットキャラクターが描かれたラッピングバスでの移動は、子供たちも大喜びだ。実施の際には愛媛FCのオフィシャルHPや新聞などでも告知されているので注目していただきたい。

 また、愛媛FCのスポンサー企業も独自に応援ツアーを企画、実施している。チェーンストアの株式会社フジによる「FITTA(フィッタ)キッズ会員・愛媛FC応援バスツアー!」がそれだ。フジのスポーツクラブ「FITTA」会員限定の企画だが、ニンジニアスタジアムのピッチ体験や選手とのふれあいも楽しめる充実した内容となっている。

 その他、10月14日(日)に行われたJ2第38節、愛媛FC対ガイナーレ鳥取の一戦においても、子供たちが参加する別企画の応援バスツアーが実施された。愛媛FCを支援する松山市スポーツ振興課による「愛媛FC・バス応援ツアー」である。

 今回の企画は、松山市内のスポーツ少年団の子供たち(小学1年〜6年)を対象とし、松山市が「キッズ世代にプロスポーツに対して関心を高めてもらい、地域に根差した地方クラブを応援してもらおう」と実施した応援バスツアーだそうである。この日は、保護者を含めた約800人がバス9台でスタジアムへと駆け付けてくれた。

 応援ツアー参加者の子供たちは、試合前のピッチでサッカーのミニゲームを楽しんだ後、ピッチ脇の陸上トラックに集合し、私たち愛媛FCサポーターズクラブ「ラランジャ・トルシーダ」が行う応援レクチャーと練習に参加した。ミニゲーム直後で本来なら疲れているはずだが、子供たちは皆、元気でノリも良く、私たちの先導に合わせてチャントを歌ったり、手拍子をしてくれた。

 その後、子供たちと保護者の方々はメインスタンドC席に移動し、松山市の野志克仁市長や松山市スポーツ振興課の皆さんと一緒に試合を観戦した。試合本番でも子供たちの、その元気は衰えず、さまざまな場面で切り替わるバックスタンド側サポーターのチャントに合わせ、声と手拍子を揃えて熱心に応援をしてくれた。

 特に「Hey! Come On!」のチャントは気に入ってもらえたのか、子供たちも保護者の方も皆、大きな声で歌ってくれた。中でも「もーてこい! もーてこい!」の掛け声はメインスタンド全体に響き渡る程の音圧が感じられ、大いに盛り上った。今後も、こういった子供たちを主役にした応援ツアーが数でも規模でも増えていくことを期待したい。私たちサポーターも、そのお手伝いを続けていきたいと思っている。

 試合が終わり、お父さんやお母さんに手を引かれつつ、スタジアムをあとにする子供たち。彼らが楽しげに愛媛FCのチャントを口ずさんでいるのを聞くと、「この愛媛にも、やっとサポーター文化が根付きつつあるのかな……」と、少々懐疑的ながらもうれしく感じる。そして、この子供たちが成長した未来には本当に、そうあって欲しいと願ってやまない。


松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>
 1967年5月14日生まれ、愛媛県松山市出身。
 愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
◎バックナンバーはこちらから