監督交代で不気味なチュニジア…それでも勝ち点3を
負けたくないという気持ちが先に立ちがちなW杯の開幕戦は、堅いスコアに落ち着くことが多い。過去には5大会連続で0-0というスコアだったこともある。
もちろん、「初戦を落としたくない」との思いは、1次リーグを戦うすべてのチームが持っている。前評判の低いチームが、初戦だけは力以上のものを発揮することもある。どちらかが一方的に蹂躙される展開は、なかなか起きるものではない。
ところが、その“なかなか起きるものではない”ことが、日本のF組で起きてしまった。スウェーデン対チュニジアの5-1である。
なぜか日本では軽視されがちだが、チュニジアはW杯でアフリカ勢力として初戦の1勝をあげた伝統国でもある。5点を食らっての大敗は屈辱的な衝撃であり、ゆえに監督更迭という荒療治に出ざるをえなかったのだろう。
ここで、彼らの立場に立って考えてみたい。初戦は凄まじい惨敗だった。監督のクビも飛んだ。そんな中で迎える第2戦。勝つしかないと開き直って、勇敢に前に出るだろうか。それとも、これ以上恥をかくわけにはいかないと、消極的なスタイルを選択するだろうか。
82年W杯。初戦でハンガリーに1-10というW杯史上最大の惨敗を喫したエルサルバドルは、続く第2戦、アルゼンチンを破って勢いに乗るベルギーと対戦した。
結果は0-1だった。
02年W杯。初戦はドイツに0-8と蹂躙されたサウジアラビアの第2戦の相手は、エトー、エムボマら攻撃陣にタレントを擁するカメルーンだった。
結果は0-1だった。
チュニジアがどう来るかはわからない。ただ、過去のW杯の初戦で大惨敗を喫した2カ国は、続く第2戦、開き直るよりはさらなる恥を避ける道を選んだ。負けても批判されにくい急場しのぎの新監督を迎えたことで、次戦以降の“責任”はチュニジアの選手たちの身に降りかかる。そんな状況で、彼らが勇敢になれるのか。とんでもなく難しいミッションであることは間違いない。
ちなみに、大量得点を奪ったドイツは、ハンガリーは、続く第2戦でどちらも1得点しか挙げることができなかった。ドイツはアイルランドに手を焼き、ハンガリーは勇敢に戦い過ぎてアルゼンチンに4発を叩き込まれた。望外のゴールラッシュには、勝った側をも変質させる魔力がある。オランダからすると、案外与しやすいスウェーデン戦になるかもしれない。
日本にとって幸いなのは、4年前の記憶が監督に、選手に鮮明に残っていることだろう。
初戦でドイツを倒した4年前の日本は、4日後、スペインに0-7と大敗を喫していたコスタリカに0-1で敗れた。
あのとき敗因として言われたのは「引いてくる相手に日本は弱い」ということだった。間違いではない。ただ、それ以上に大きかったのは、ドイツ戦の勝利に酔いしれすぎた、ということではなかったか。
日本と戦ったドイツ人がそうだったように、コスタリカと戦う日本には、「勝って当然」との空気が漂っていた。オランダ相手に2度追いついたいまも、似たような雰囲気が生まれている。
同じ轍を踏むわけにはいかない。
4年前のコスタリカがそうだったように、日曜日に戦うチュニジアは、どんな優勝候補にとってもゴールをこじ開けるのが難しい相手となる。戦う前から得失点差のことなど考えてはいけない。まずは勝ち点3。それが目指すべき最大の目標である。
<この原稿は26年6月18日付「スポ-ツニッポン」に掲載されています>