今年の元日、国立競技場のゴール裏を埋めつくした柏のサポーターはまず「KASHIWA」という巨大な人文字を造り上げ、次にそこから3文字を消した。残ったのはAとSとIとA。天皇杯決勝を前に、彼らは勝者に出場権が与えられるアジア・チャンピオンズ・リーグ(ACL)への思いをスタンドに刻んだのである。
 ついこの間まで極めて低い関心しか寄せられていなかったACLは、ここにきてどんどんと存在感を増してきている。勝ち上がっていけば、世界一を賭けた大会に出場することができるという明確なレールが敷かれたことで、日本人の目の色は変わった。日本サッカー協会、Jリーグは今季からACLを戦う4チームを本格的にバックアップする姿勢を打ち出した。

 だが、初戦を敵地で戦ったレッズは、広州恒大に0―3と完敗した。スコアほどの差はなかったし、まだ巻き返すチャンスは十分にある。それでも、ACLに本腰を入れ始めた日本サッカーにとって、いささかショッキングな敗北だったことも間違いない。

 勝敗を分けたのは、一言でいってしまえば「外国人の質」だった。試合の流れを決定づけた広州の先制点は、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイの3外国人だけで作り出したもの。レッズの選手たちは少しずつ、しかしことごとく上を行かれてしまった。Jリーグでは対峙しえないレベルへの戸惑いが原因だった。

 かつては、Jリーグにも世界的な外国人選手が数多くいた。日本が初めて出場したW杯フランス大会は、日本代表の試合を見るだけでなく、ブラジルやユーゴスラビアを牽引するJリーガーを見る楽しみもあった。

 いまは、ない。

 GDPで中国に抜かれたとはいえ、日本は依然として世界第3位の経済大国である。にもかかわらず、中国が買いあさっているような大物外国人選手がJリーグに来ることは、ぱったりとなくなってしまった。外国人が日本に対する興味を失ったのか?違う。Jリーグのクラブが獲得しようとする意志を失ったのである。

 もちろん、大物外国人選手に頼らず、自国の選手と地味な外国人選手で戦っていく、という選択肢があってもいい。ただ、すべてのクラブが同じ方向を向く必要はない。ネームバリューだけでファンをスタンドに呼ぶことができる選手を獲得するのも、プロとして一つの道である。

 そのために必要なのは、言うまでもなく、資金である。外国資本なのか、パチンコ業界なのか。現在のJリーグが受け入れていないジャンルの資金を引き入れることも、本気で考えていく必要がある。アジアで勝ちたいのであれば。

<この原稿は13年2月28日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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