島﨑もも(東京女子体育大学新体操競技部/愛媛県松山市出身)第4回「覚悟の家出」
聖カタリナ学園高校2年の島﨑もも(現・東京女子体育大学1年)は、2025年3月、東京・味の素ナショナルトレーニングセンターでの代表選考会に臨んだ。個人総合は、ももを含め7選手が参加した。成績上位者から世界選手権などグレードの高い大会に派遣される。
ももは1カ月前に右足首じん帯断裂という大ケガを負ったが、本人の努力に加え、周囲のサポートもあり、1週間前には体を動かせる状態にまで回復した。「思うような練習ができないまま本番を迎えたので、正直、不安な気持ちが大きかった」と本人。それでも父・優(まさる)によれば、選考会前日の映像を見る限り「ももはゾーンに入っていて、すごく良かった」というほど調子を上げていた。 当日の演技をももは、こう振り返った。
「本番は少し緊張もあり、思うようにいかなかった部分がありました。前半は比較的落ち着いて演技することができましたが、クラブでは後半から落下が続いてしまい、点数にも大きく影響してしまいました。前半が良かった分、後半にミスが続いてしまったことはすごく悔しかった。それでも最後まで気持ちを切らさず、自分にできる演技をしよう、と……」
結果は7人中最下位。それでもルーマニアで行なわれるWCCクリジュナポカの出場権を得た。2024年パリオリンピック金メダリストのダリア・ヴァルフォロメーエフ(ドイツ)、同銅メダリストのソフィア・ラファエリ(イタリア)らが出場した本番は36位だった。 代表選考会から1週間後、香川の高松市総合体育館で全国高校選抜大会が開催された。全国高校総合体育大会(インターハイ)の個人総合は2種目で争うが、選抜は4種目を1日でこなすハードな日程だ。
ももを小学1年から高校卒業まで指導したEstella RGの髙橋瑛味子は、当時を懐かしむように、こう語った。
「地元のちびっ子たちがみんな応援に来てくれたので、あの子も活躍する姿をチームの子たちに見せるという気持ちが強かったはずです。選抜大会は1日で4種目行なうので、体力面でも厳しい状況だった。よく耐えたと思います」
「完璧を求めすぎた」
ケガ明けのももにとっては厳しい条件だったが、“地の利”が幸いした。「ももが負けなしの会場なんです。喜田未来乃選手(エンジェルRG・カガワ日中)にも勝ったことがある」とは父・優。喜田未来乃とは、東京オリンピック代表の純鈴(すみれ)の妹で、現在世界選手権3度出場の日本のトップ選手である。
ももは言った。
「慣れている体育館だったことに加え、地元の仲間もたくさん応援に来てくれたことが大きな安心感につながりました。いつも応援してくれている人たちが近くにいてくれたことで落ち着いて演技をすることができた」
この大会でももは、4種目中2種目(フープとクラブ)で全体2位だった。リボンは1位タイで、ボールが単独1位。優勝を争った千葉の明聖高校2年の岡田華英選手(現・日本女子体育大学1年)は3種目で1位。ボールの点差(2.15)で、ももが0.45点差で競り勝ち、自身初の高校日本一となった。 その後、インターハイを制し、個人2冠を獲得したももは、上昇気流に乗ったかに思われた。だが、彼女の気持ちが成績に追いつかなかった。
「優勝することが目標だと、完璧を求めすぎてしまう。そのプレッシャーというか、自分を追い込んでしまい、悪い方向に考えてしまうことが多かったんです」
高校3年の秋のことだ。ももは「新体操を辞めたい」と思い詰め、家を飛び出した……。
(最終回につづく)
<島﨑もも(しまざき・もも)プロフィール>
2007年12月4日、愛媛県松山市出身。小学1年時に地元の新体操クラブにスカウトされ、競技を始める。16年~2020年度にかけて、5年連続で愛媛県優秀選手賞を受賞。18年度〜21年度の4年連続で新体操ナショナル強化指定選手に選出される。高校1年時に全国高校総合体育大会(インターハイ)で2位に入る。翌年のインターハイも2位。3年時には全国高校新体操選抜大会とインターハイで優勝。国際大会にも出場した。今春から東京女子体育大学に進学。身長161cm。リフレッシュ方法は散歩。
(文・写真/杉浦泰介)

