第3回 「箱根に向け、1年1年が勝負」~添田正美陸上競技部監督&佐藤信春スカウト部長兼強化コーチインタビュー(前編)~

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二宮清純: 大正大学が箱根駅伝出場を目指し、陸上競技部を創設するというニュースに接した時は、正直言って驚きました。大正大学は今年が創立100周年。大学では、これを契機に競技力の向上と大学ブランドの発信強化を目指すとしていますが、その中核が陸上競技部の駅伝というわけです。初代監督が国士舘大学で監督経験のある添田正美さん、そしてスカウト部長兼強化コーチとして監督をサポートするのが、富士通陸上競技部監督の他、駒澤大学でコーチ兼スカウトの任にあった佐藤信春さんです。

 まずは添田さんから。監督の話は、いつ頂いたのですか?

 

  

添田正美: 昨年の12月くらいです。それまでは国士舘大学の監督、そしてコーチをしていました。もう1度、監督として運営管理車に乗り、選手たちを支えたい、という思いがあり、これはもうやるしかない、と決断しました。

佐藤信春: 添田さんを大正大学に推薦したのは私です。彼は私が富士通の監督をしていた頃の教え子で、国士舘で監督として6年連続で箱根駅伝に出場させていた。その実績を買いました。

 

二宮: 来年4月の実質的な創部に向け、文字通りゼロからのスタートです。来年4月に入学する選手たちの目処は立っているのでしょうか。

添田: 既に20人くらいは内定しています。来年入学の第1期生が、4年生の時には箱根に出場したい。そういう目標を立てています。

二宮: 実績のある高校生は、名門大学や強豪大学が先にスカウトしているのではないでしょうか。

添田: そうですね。5000メートルが13分台の選手は、箱根で優勝争いをするような大学が既におさえているケースが多いですね。シード権を争うチームなら、14分30秒以内。予選会で箱根を目指します、というレベルのチームなら15分以内。それが一応の目安です。大正大学の場合、14分台の選手が10人近く内定しています。これから創部するチームとしては上々のスタートだと思っています。

 

 

二宮: スカウト部門を担当する佐藤さんの功績ですね。

佐藤: まぁ、腕じゃないですか(笑)。いやいや、冗談はともかく、高校の監督さんや保護者の方に、誠心誠意、学校のことを説明した結果だと思っています。大学ではどういう指導をするか、選手を預かる寮や練習環境はどうか、卒業後は、どんな面倒を見られるか。そうしたことを実直に、そして丁寧に説明しました。ゼロからのスタートということは、逆に言えば、これから一緒に未来をつくっていくことができる。そこに共鳴していただいた保護者や教員の方もいらっしゃいました。

 

 

二宮: 寮の場所については、もう内定しているようですね。

添田: まだ発表はできませんが、目処は立っています。寮では、ウチの奥さんに、いわゆる寮母さんの役割を果たしてもらおうと考えています。

二宮: 箱根駅伝の常勝チームである青山学院大学も、町田市の合宿所では原晋監督夫人が寮母さんとして選手たちの面倒を見ています。

添田: 実は国士舘の監督時代も、選手たちと同じ合宿所ではなかったのですが、私たち家族は合宿所の隣のマンションに住み、度々選手が訪ねてきて相談にのったり、学年ごとにうちで食事会などをしていました。逆にうちの息子は合宿所に行って選手たちとお風呂に入ったりして家族ぐるみで関わっていました。箱根を目指すには、選手たちと一緒に生活し、日頃からコミュニケーションをとっておくことが重要。ただ練習を見ているだけでは、なかなか強いチームはつくれません。またウチの妻はヨガやピラティスの指導資格を持っているので、そうした部分もトレーニングに取り入れていきたいと考えています。

 

二宮: 恩師である佐藤さんから見て、添田さんはどういう監督ですか。

佐藤: ちょっと古いかもしれませんが、プロ野球で言えば、優勝したことのなかった広島カープを初優勝(優勝4回)、日本一(3回)に導いた古葉竹識さんでしょうか?

 

 

二宮: 古葉さんですか!? 生前、取材者として随分お世話になりましたが、添田さんとの共通点は?

佐藤: ほら古葉さんって、ベンチで半分隠れながらサインを出していたでしょう。派手じゃないけど、コツコツと点を取る野球でいつの間にか勝っている。あんなチームづくりを僕は監督に期待しています。

添田: 自分で言うのも何ですけど、結構、勝負に対しては執着心が強いと思っています。一応、創部から6年後の箱根出場を公式的には目標に定めていますが、先にも言ったように、1期生が4年生になる時には勝負してみたい。1年1年が勝負だと考えています。

 

(後編につづく)

 

添田正美(そえた・まさみ)プロフィール>

1977年3月29日、福島県出身。

出身校:国士舘大学

◆経歴

2010年 8月~2015年3月:東京経済大学 陸上競技部 長距離コーチ

2015年 4月~2015年10月:国士舘大学 陸上競技部 駅伝コーチ

2015年 11月~2022年3月:国士舘大学 陸上競技部 駅伝監督

2022 年 4月~2026年3月:国士舘大学 陸上競技部 駅伝コーチ

2026年 4月~:大正大学 陸上競技部 監督

◆主な実績

・箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)8大会連続出場(第93回~第100回)

・全日本大学駅伝対校選手権大会 出場(第48回・第55回)

・第92回箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)関東学生連合チーム 監督

 

佐藤信春(さとう・のぶはる)

1961年1月11日、福島県出身。

◆経歴

2003年4月 富士通陸上競技部 監督

2005年3月 JALグランドサービス陸上競技部 監督

2010年12月 聖徳大学陸上競技部 監督

2018年4月 駒澤大学陸上部 コーチ兼スカウト就任(聖徳大学と兼任)

2026年4月:大正大学 陸上競技部 コーチ

◆主な実績

2018年に駒澤大学陸上部のコーチ兼スカウト就任後、駒澤大学陸上部(現:大八木弘明総監督)のもと、全国トップレベルの選手の発掘・育成などチームの競技力向上に大きく貢献し、「大学三大駅伝」において、以下の実績を支えた。

・箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)総合優勝2回

・出雲駅伝(出雲全日本大学選抜駅伝競走)優勝2回

・全日本大学駅伝対校選手権大会 優勝5回

 

 

二宮清純(にのみや・せいじゅん)プロフィール>

1960年、愛媛県出身。明治大学大学院博士後期課程修了・博士(学術)。株式会社スポーツコミュニケーションズ代表取締役。広島大学特別招聘教授。大正大学地域構想研究所客員教授。経済産業省「地域×スポーツクラブ産業研究会」委員。認定NPO法人健康都市活動支援機構理事。『スポーツ名勝負物語』(講談社現代新書)『勝者の思考法』(PHP新書)『プロ野球“衝撃の昭和史”』(文春新書)『変われない組織は亡びる』(河野太郎議員との共著・祥伝社新書)『歩を「と金」に変える人材活用術』(羽生善治氏との共著・廣済堂出版)、『森保一の決める技法』(幻冬舎新書)など著者多数。

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大正大学は今年創立100周年を迎えます。大学では節目の100周年を「第二の開学」と位置づけ、次の100年に向けた取り組みを加速させています。その基軸のひとつが「競技力の強化」と「大学ブランドの向上」を目的としたスポーツ戦略です。 本コーナーでは、その一端を紹介するとともに、スポーツと地域、スポーツとビジネス、スポーツと福祉のよりよい関係についても模索していきます。

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