勢い増す欧州移籍とJで台頭する新たな才能

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 ちょうど30年前のいまごろ、バルセロナから夜行バスに乗ってスペイン北部にあるログローニョという街に向かったことがある。もちろん仕事。目的は、この街のクラブ、ログロニェスへの加入が発表された日本人選手を取材するため、だった。

 

 まだ日本にはW杯出場経験はなく、スペインには優勝経験のない時代だった。日本にとっては出場が、スペインにとっては優勝が夢物語でしかなかった時代だった。当然、日本人選手の評価も、いまとは比較にならないぐらい低かった。

 

 ログローニョで取材に答えてくれた財前宣之は、U-17の日本代表、中田英寿を嫉妬させた才能の持ち主だった。ログロニェスは2部からあがったばかりの、いわゆる泡沫チームだった。

 

 実際に9カ月後、彼らはぶっちぎりの最下位で2部に逆戻りすることになるのだが、そんなチームでさえ、財前に出場機会を与えようとはしなかった。最大の原因は本人のケガにあったとはいえ、チームからもメディアからも、財前の復帰を渇望するような雰囲気は一切伝わってこなかった。

 

 当時、財前はいわゆる欧州5大リーグに所属する、たった一人の日本人だった。

 

 30年後のいま、景色はすっかり変わった。欧州5大リーグに所属する日本人選手は、ついに30人に達した(ドイツ国籍も所有するフライブルクの長田澪を含めると31人)。2部でプレーする選手まで合わせると55人にもなる。

 

 ちなみに、財前がログロニェスに加わる1シーズン前、欧州5大リーグでプレーするブラジル人は31人だった。今季は76人で、かつ、昨季に比べると29人も減っている。

 

 もちろん、所属しているチームの大きさや与えられている役割などにはまだ差があるものの、一方で、日本には南米やアフリカの選手のように、たとえばアルゼンチン出身でありながらイタリア人として扱われる、といった恩恵がほとんどない。完全な外国人枠の選手としてカウントされることを考えると、獲る側は日本を相当に上質な産出国とみなしていることが分かる。

 

 なぜこんなにも劇的な成長曲線は描かれたのか。まず考えられるのは、以前は日本人選手の実力が不当なほど低く見積もられていた、ということ。次に、以前であれば強豪国に生まれなければ不可能だった、“世界トップレベルの試合や練習を目にする”という機会が日本にいても動画等で可能になったこと。さらにはサッカーの流れが勤勉さや忠実さ、規律を重視するようになり、そこに日本人の国民性がハマることに欧州が気づき始めた――といったところだろうか。

 

 というわけで、日本から欧州への移籍という流れは、当面、勢いを増すばかりだと個人的にはみる。日本サッカー協会が欧州サッカー連盟と連携したことで、U-16日本代表が欧州選手権予選を戦う国々と相まみえる機会が生まれたことにも、流れに拍車をかけるだろう。

 

 心配されるのは、あまりにも多くの才能が流出することによる国内の空洞化だが、Jリーグに目を向ければ新たな才能も台頭してきている。

 

 中でも、すでに2ゴールをあげたマリノスの16歳、三井寺眞のスケールの大きさには目を瞠らされる。何よりうれしいのは、仙台のFCフォーリクラッセというクラブチームで腕を磨いてきたということ。このチームの代表は、あの財前宣之なのである。

 

<この原稿は26年8月27日付「スポ-ツニッポン」に掲載されています>

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