優勝争いはもちろん興味深い。だが、個人的には優勝争い以上に楽しみにしているのが、昇格、降格を争う戦いである。Jに限ったことではない。たまたま滞在している国で入れ替え戦やプレーオフが行われているとなれば、たとえそれが3部、4部の試合であってもつい足を運びたくなってしまうほどだ。
 J1とJ2、さらにJ2とJFLの間には、実は意外なぐらいレベルの差はない。JFLでプレーしている選手の中には、J1のトップチームでやっていてもおかしくない選手もいる。才能以上にカテゴリーの差が如実に表れるのは、環境である。

 来年から多くのチームがJ3に移行することになるJFLでは、真夏の炎天下、午後1時のキックオフというのも珍しくない。選手たちの体調を考えればちょっと信じがたいほど過酷な環境なのだが、夜間照明の施設を持っていないクラブがある以上、やむを得ないことなのである。

 予算の厳しいクラブになると、試合当日に会場に到着し、試合が終わるとすぐとんぼ返り、ということもある。そして、JFLを経てJ2に昇格していったすべてのチームが、そのことを知っている。

 だから、落ちたくない。一度Jの味を知ってしまえば、3部リーグでの生活は地獄でしかない。負ければ失うものが多すぎる者と捨て身で這い上がろうとする者との対決は、ゆえに、素晴らしくスリリングなものとなる場合が多い。

 プレーオフもまた、見逃せない。昨年は下剋上に次ぐ下剋上で大分が大まくりを決めてみせたが、今年は上位アドバンテージを持つ2チームがぎりぎりのところでファースト・ラウンドを逃げ切った。来る日曜日、国立での決戦は、J1の味を知る京都の執着心が優るのか、J1を知らない徳島の憧れが優るのか――。

 サッカーの母国イングランドでは、昇格プレーオフがシーズンの掉尾を飾る一大イベントとして定着してきている。かの国に負けず劣らずトーナメント好きの日本でも、いずれは年末、もしくは年度末の風物詩として認知されていくことだろう。

 ただ、それぞれに見どころ十分の戦いであるにもかかわらず、プレーオフと入れ替え戦は同日のほぼ同時刻に行われた。せっかくの魅力的なコンテンツだけに、1試合しかライブで楽しむことができないというのはあまりに惜しい。月曜日にビッグゲームを1試合持ってくるNFLの“マンデーナイトゲーム”の影響からか、最近では欧州でも試合開催日を分散させ、少しでも多くの視聴者を獲得しようと努力しているが、望まれるのは同様の姿勢である。

<この原稿は13年12月5日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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