脱帽である。土下座をしてもいい。わたしにできるありとあらゆる「参りました!」をすべて繰り出したとしても、彼らがなし遂げたことの評価としてはまるで足りない。本当に、本当に、本当に素晴らしいサンフレッチェの連覇達成だった。
 サッカーは、もちろん現場が戦うものでもあるが、最近の欧州ではそれ以上にフロントによる経済的な戦いが重要になっている。どう戦うか、ではなく誰が戦うか。徹底して下部組織出身者を大切にするバルサでさえ、今季はブラジルからスーパースターを連れてきた。勝つためには、まず資金が必要な時代なのである。

 だが、サンフレッチェの資金はおよそ潤沢とは言い難い。主力は、毎年のように他のクラブに引き抜かれていく。にもかかわらずの連覇。日本に限らず、欧州のトップリーグでも2部から昇格してきたばかりのチームが優勝することは時々あるが、2部に落ちるような経済力しかないクラブが連覇をすることはまずない。少なくとも、わたしの知る限りはまったくない。大げさではなく、これは空前絶後の快挙である。

 ただ、いささかの寂しさもある。

 森保監督の手腕は素晴らしい。常に才能を輩出し続けている下部組織も素晴らしい。いくつもの素晴らしさが重なったがゆえになし遂げられた地方クラブの連覇だが、しかし、日本でなければ、正確に言うと現在の日本でなければありえない連覇でもあった。

 近年、Jリーグは東南アジアとの関係拡充に努めている。悪いことではない。今週も甲府にインドネシアから練習生が参加する、というニュースがあった。一般的な日本人の感覚からすると、東南アジアの選手が日本に憧れるのは当然、と思うところもあるだろう。

 間違いではない。日本のサッカーは、Jリーグは東南アジアで特別な存在である。だが、その好イメージ、言ってみれば日本の持つアドバンテージは急速に薄れつつある。右肩上がりで上昇を続ける東南アジアの経済発展は、そのままプロ選手のギャラに直結している。年俸が億を超える選手が当たり前になるのも、もはや時間の問題なのだ。

 中国に抜かれたとはいえ、依然世界3位の経済大国であるはずの日本である。では、なぜJリーグの選手たちは経済破綻している欧州の国や、発展著しいとはいえまだまだGDPでは日本に遠く及ばない東南アジアを圧するようなギャラを得ることができないのか。なぜ、近年の欧州ではありえない地方クラブの連覇がおき得たのか。

 そろそろ、考えなければいけない時期にきている。

<この原稿は13年12月12日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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