指導者として、そしてBCリーグでの初めてのシーズンが終わりました。自分としては、納得のいくシーズンを送ることができたと感じています。正直、開幕前は不安でした。指導者として初めてだったことに加え、現場から長く離れていたからです。しかし、終わってみれば、リーグ連覇を果たすことはできませんでしたが、レギュラーシーズンでは前後期ともに勝率7割台、通期(72試合)でリーグ歴代最多となる52勝を挙げることができました。選手のおかげで「オレでもできるじゃん!」と思うことができました。
 故障者ゼロで全投手に勝ち星のワケ

 レギュラーシーズン中、苦しかった時期はなかったと言っても過言ではありませんでした。前回述べたように、開幕4試合でチームの強さ、特徴がわかり、自分がすべきことが明確になったことが大きかったのです。そしてもうひとつは、絶対的なエース、寺田哲也(作新学院高−作新学院大)の存在でした。彼がいたおかげで、チーム力は抜群でした。 この寺田と佐藤弘輝(黒羽高−日本大国際関係学部)が先発の柱を担ってくれましたので、あと1枠を他の投手が争うことで、お互いに切磋琢磨できたことも良かったと思います。

 そして、投手陣は誰ひとり大きなケガをしなかったことも、チームの層を厚くしました。実はその要因のひとつは、“余分なピッチング”を排除したことにあると感じています。通常、先発以外のベンチ入りピッチャーは試合の途中で肩をつくります。しかし僕自身、現役時代、「登板しないのに、なぜピッチングをしなければいけないんだろう?」と疑問に思っていたのです。そこで、今季はその慣習をやめたのです。そうしたところ、故障者が出るどころか、登録メンバー12人全員が勝ち星を挙げることができました。

 一方、打線はというと、やはり1番・福岡良州(流通経済大附柏高−流通経済大)、4番・足立尚也(横浜商科大高−桜美林大)の活躍が大きかったですね。もともとパワーのある福岡は、持ち前の積極的なバッティングで強い打球を飛ばし、二塁打になることが多くありました。そのため、盗塁がなくても、十分にリードオフマンとしての仕事を果たしてくれました。

 二塁打が多かったのは、福岡だけではありませんでした。チームとしても6球団で唯一3ケタをマークしたのです。セオリー通りにランナーが塁に出れば、犠打でランナーを進めるのが私の基本的な考えです。にもかかわらず、今季は犠打数が60と少なかったのは、二塁打が多かったからなのです。バントという選択肢をとらずに、次の打者にも思い切り打たせることができた。これが得点にもつながったのだと思います。

 足立の4番起用は、野球への取り組む姿勢はもちろん、私生活を見ても、「4番は彼しかいない」と私が決めたことでした。しかし、最初は周囲から「えっ!? 足立が4番で大丈夫?」という声があがっていたことも事実です。しかし、足立はしっかりと期待に応え、誰もが認める4番打者となってくれました。「自分の目に狂いはなかった」と、私も自信をもつことができました。

 残念ながらミリオンスターズとのリーグチャンピオンシップでは、レギュラーシーズンの強さが発揮できませんでした。一番のポイントとなったのは、やはり初戦でしょう。先発した寺田が、初対戦だったサンチェスに初球をスタンドに運ばれ、先制2ランを浴びたのです。結局、これが決勝点となりました。この一発で、初戦のみならず、チャンピオンシップの主導権を握られてしまったのです。私も選手も、1球の怖さを改めて痛感させられました。

 新戦力、成長、復活への期待

 さて、来季はまた新たなスタートを切ることになります。今季は高津臣吾前監督が育成した選手たちが、ほとんど残った状態でしたが、来季はそうはいきません。特に寺田、福岡と投打の柱が抜けた穴は大きい。正直、戦力ダウンは否めないと覚悟しています。しかし、だからといって、不安だとは思っていません。それよりも、一からチームをつくることにやりがいを感じています。

 野手総合コーチには、新しく高須洋介(金沢高−青山学院大−近鉄−東北楽天)が就任しました。守備に定評があり、打者としても相手が嫌がるバッティングを得意としていますから、選手たちにもいろいろとアドバイスしてくれることでしょう。さらに、彼は内野手兼任ということで現役でもありますから、もちろん戦力としても期待しています。得意の逆方向へのバッティングでチャンスを広げてくれたら、面白いでしょうね。それこそ「3番・高須、4番・足立」が実現すれば、今季とはまた一味違う打線がお見せできるのではないかと思っています。

 そしてエース候補と考えているのは、田村勇磨(日本文理高)です。1年目の今季は23試合に登板し、1勝1敗、防御率1.62という成績でした。彼は堂々としており、マウンドさばきが非常にいいのです。私としては、来季は田村と心中するくらいの気持ちでいます。それくらい大きな期待を寄せています。

 とはいえ、若干19歳。少々、私生活において甘さが見られるのが心配なところです。このオフ、果たしてどれだけ彼が本気になってトレーニングを取り組んでくるのかにかかっています。しかし、私の気持ちは本人にも伝わっていると信じていますので、キャンプで会うのが楽しみです。

 そして、ケガで今季は棒に振った野呂大樹(堀越高−平成国際大)の完全復活にも期待しています。今季は十分にできなかった機動力野球ができれば、チームにとっても大きい武器となります。悔しいシーズンを過ごした今季の分も、野呂には思い切り足でかき回してほしいですね。

 いずれにせよ、来季も変わらないのは、まず一番に球場に足を運んで観に来てくれたファンの人たちのために戦うということです。新潟アルビレックスBCの試合を観戦して、満足して帰っていただく。そのために、チーム一丸となった戦っていきますので、2014年もたくさんの応援、よろしくお願いします。

内藤尚行(ないとう・なおゆき)>:新潟アルビレックスBC監督
1968年7月24日、愛知県出身。豊川高から87年、ドラフト3位でヤクルトに入団。その後、ロッテ、中日でプレーし、97年限りで現役を引退。現役時代から「ギャオス内藤」の愛称で親しまれている。2013年より新潟アルビレックスBCの監督を務める。
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