賛否両論はあったようだが、わたしは、JリーグU−22選抜のJ3参加に大賛成だった。前例がない? Jの理念に反する? まずはやってみればいい。しょせんは下部リーグ。挑戦して、失敗すれば考えればいい。そう思っていた。
 ただ、沖縄で行われた彼らの初戦には、大いに失望させられた。
 練習をしたのは2日だけだったというから、チームとしての体をなしていなかったのは仕方がない。とんでもないロングシュートで場内の度肝を抜いた名古屋の森など、個々を見れば光る素材もいた。

 だが、もし彼らが開幕戦のような戦いを続けるのであれば、来年はJ3から排除するべきだ、とも感じた。

 スペインの2部リーグには、今回のU−22選抜同様に、たとえ優勝しようが絶対に昇格することのできないチームが参加している。今季でいえば、レアルやバルサのBチームである。

 才能のある、しかしトップチームでは出番のない選手に公式戦の舞台を、という考え方は、日本もスペインも同じである。昇格を目指す他のクラブからするといささか目障りかもしれない彼らが、それでもリーグに加盟できているのは、目の前の試合にかける気持ちにおいては、他のチームとまるで変わらないから、である。

 バルサBの選手は、そこで結果を残さなければトップに昇格することはできない。ゆえに彼らは必至で、ゆえに2部リーグへの参加を許されている。

 アマチュアまじりのFC琉球相手にたった3本のシュートしか打てずに0−3で完敗したU−22選抜は、必死に勝とう、としていなかった。経験を積むのが目的だから。本番のための練習だから。選手だけではなく、監督の采配からもそんな思いが透けて見えた。

 今季のJ3では、選手交代が5人まで認められている。U−22選抜の選手たちに試合経験を積ませるためのレギュレーションなのだろうが、開幕戦での高畠監督は、早速このルールを利用した。試合途中、GKを交代させたのである。

 その時点で、彼らはリードを許していた。こんな状況でGKを代える監督は世界中どこを探してもいない。FC琉球からすると、真剣勝負をしている最中に、「あっ、俺らは練習試合だから」と宣言されたようなものである。

 開幕戦のスタンドは無料開放されていたわけではない。U−22選抜の公開練習と銘打たれていたわけでもない。開幕戦で彼らがやったことは、プロスポーツに対する重大な裏切りだった。このままの姿勢であれば、彼らはJ3を破壊する存在となる。

<この原稿は14年3月13日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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