ガッツ石松、畑山隆則に続く、史上3人目の日本人ライト級世界王者が誕生した。
 19日、世界ボクシング協会(WBA)ライト級タイトルマッチ12回戦が、東京・ディファ有明で行われ、挑戦者で同級7位の小堀佑介(角海老宝石)が同級王者のホセ・アルファロ(ニカラグア)を3回2分8秒、TKOで破り、チャンピオンベルトを手にした。
 初の世界タイトルマッチに挑んだ小堀は、2回にアルファロの連打でダウンを喫した。しかし、3回に左フックでダウンを奪い返す。さらに立ち上がった相手に連打を浴びせると、レフェリーが試合を止め、小堀の世界王座獲得が決定した。
 日本選手での同級世界王者は畑山隆則以来、8年ぶり3人目。これで日本のジムに所属する現役王者は6人となった。小堀は戦績を23勝(12KO)2敗1分とした。
(写真:WBAライト級ベルトを獲得した小堀選手(左)と田中トレーナー)
 真っ向からの打ち合いに果敢に挑んだ。ダウンを喫した後も、ひるまなかった。王者はKO率9割を誇るハードパンチャーだ。「怖くはなかったのか?」という質問に、小堀は「負ける方がイヤですから」と、即答した。
 ファイターどうしの一戦は、試合前に小堀が「やるか、やられるかの勝負になると思う」と語っていたとおり、序盤から息の詰まるような接近戦となった。
 2R、小堀は王者の左右の連打によろめき、ダウンをとられる。しかし「バランスが崩れて倒れてしまった。良いパンチだったが効いてはいなかった」と、焦らなかった。3R、ワン・ツーを繰り出し、相手が前に出てきたところに、カウンターの左フック一閃。マットに倒れたアルファロが立ち上がったところに連打を浴びせると、レフェリーが試合を止めた。劇的なTKO勝利に、観客総立ちの「小堀」コールが会場を包んだ。
「すごい嬉しいです。とても強いチャンピオンだった。今後の目標? 決まってないです。帰って、寝たいです」
 リング上の勝利者インタビューでは、いつもの飾らない小堀節を披露した。

 デビュー9年目。今年1月、6度目の防衛を果たした後に日本タイトルを返上、そこからは世界だけを見てきた。
「周りの人が苦労してこの試合を組んでくれた。相手のパンチが強くて、途中、気持ちが折れそうになったけど、情けない試合だけはしたくない、と。気持ちだけは前に出したかった。狙ったパンチはなく、練習でやってきたことが自然に出た。手ごたえはあったが、立ってくるとは思っていた。相手のパンチもまだ生きていたので、ここで終わらせようと思った」
 試合後の会見で小堀はこう振り返り、「ビビらず、打ち合ったことが良かった」と笑顔を見せた。
 入門当時から小堀を指導してきた田中栄民トレーナーは「アルファロは気持ちの強いファイター。しっかりと打ち抜くパンチを打つので、ワン・ツーで攻めて、相手が出たところを右ストレートから得意の左フックを合わせよう、と。そういう練習を随分してきた」。二人三脚で取り組んできた成果が、大一番で実った。
 ガッツ石松、畑山隆則に続く、史上3人目の日本人ライト級世界王者。26歳の“自然児”が、歴史に名を連ねた。

 この日、アルファロを契約選手として抱える世界的なプロモーターのドン・キング氏も会場に訪れた。試合後には、「素晴らしいファイトだった。日本のファンは小堀を誇りに思ってほしい」と新チャンピオンを称えた。
 小堀の初防衛戦は、この日、セミファイナルでTKO勝利をあげたWBA世界ランク1位のモーゼス(ナミビア)との指名試合が義務付けられている。キング氏は「小堀は次にポーラス・モーゼスと東京ドームでやるぞ」と饒舌に語った。今後の動向が注目される。
(写真:試合後、喜びを表現する小堀(中央)。右はドン・キング氏。次戦の日本での開催は実現するのか……)