負ける者がいるから、勝つ者がいる。ましてサッカーは、内容にそぐわない理不尽な結果が多々起こりうる競技でもある。勝ったからすべてを許し、負けたからすべてを否定するという考え方を、わたしはどうしても好きにはなれない。
ただ、「運が悪かった」で片づけてはいけない敗北もある。
すでに敗退が決まっていた浦和に続き、鹿島もアジアの舞台を去ることになった。
両チームとも、グループ最下位での敗退だった。
1チームだけであれば、コンディションが悪かった、審判のジャッジに泣かされた……等々の言い訳に逃げることもできる。けれども、2チームである。現在のJで首位を走っているチームと、Jで最も多くのタイトルを獲得しているチームが、ともに最下位で1次リーグを終えてしまったのである。
1次リーグで!
何度もこの欄でも指摘してきたように、近年、経済力の高まりをバックに、アジア各国のクラブは急速に力をつけてきている。代表レベルでは依然としてパッとしないにもかかわらず、中国やタイのクラブがACLで勝ちを重ねるのは、もはやニュースでもなんでもなくなった。
一方で、Jの各クラブは、長く続いた「身の丈にあった経営」とやらに長く縛られてきたこともあり、経済的な優位性をどんどんと失ってきた。選手にとっては、Jがアジアで最も多くのギャラを手にできたリーグだった時代は終わったのである。かつてはJに集中していた才能が分散するようになった――これもJがアジアで勝てなくなった理由の一つではある。
とはいえ、2チームが最下位になるほどの理由ではない。
確かに中国やタイのクラブは力をつけてきた。バックに資金力があるのも事実である。だが、ならば韓国のクラブはどうなのか。資金力で他の国に押されがちなのは、日本と同様である。いや、多くの韓国人選手がJでプレーしていることを考えれば、状況は日本よりも厳しいかもしれない。
だが、今回のACLに出場した韓国のチームで、最下位に沈んだところは一つもない。
日本の選手は球際に弱い、という声が、ここにきてよく聞かれるようになってきた。否定はしない。ただ、浦和の最下位も、鹿島の最下位も、そしてG大阪の苦戦も、すべて「球際」で片づけてしまうのは、「根性」を万能の解決策にしていた時代にも似て、いささか乱暴にすぎる。
今回、JリーグはACLに出場するチームのために、相当の知恵を絞り、便宜を図った。この大会にかける選手やファンの意気込みにも相当なものがあった。にもかかわらずの惨敗。問題は、相当に深刻である。若年層の代表チームが勝てないことよりも、はるかに深刻である。
<この原稿は15年5月6日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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