大相撲史上最多の34度の優勝回数を誇る横綱・白鵬は、この先、どこまで記録を伸ばすのか。


 昨秋、北の湖理事長は、「最低3年はやる。半分の9回優勝すれば40回に届く」と語っていた。

 これといって大きな故障のない白鵬は、あと3年どころか5年は相撲がとれるのではないか。
 となれば、優勝回数は50回に近づくかもしれない。白鵬が偉大なのはわかるが、ひとり旅を続けさせる他の力士の不甲斐なさには溜め息が出る。「打倒・白鵬」に名乗りをあげる力士はいないのか。

 元関脇の貴闘力は現役時代、“曙キラー”として勇名を馳せた。元横綱から7個もの金星をあげているのだ。

 1994年夏場所の対戦では土俵際で引き落とした。これが原因で曙は両ヒザの古傷を悪化させ、途中休場に追い込まれてしまう。97年の秋場所でも同様のケースがあり、翌場所の全休を余儀なくされた。

 貴闘力が曙に強かったのには、理由がある。ビデオテープを擦り切れるほど見て取り口を研究したというのだ。

 その結果、次のような結論にたどりついた。
「懐に飛び込んで小さく突く」

 曙はリーチが長い。離れると、得意の双手突きで一気に土俵の外にはじき飛ばされてしまう。
 といって、くっつき過ぎると肩越しから、がっちりと両まわしをとられてしまう。
「足を止めず、相手が上手をとりにくるのをぎりぎりでかわしながら、内側から突いていく。勝つには、これしかなかったんです」

 おそらく曙は貴闘力の顔を見るのも嫌だったはずだ。

 優勝回数こそ1回だが、殊勲賞3回、敢闘賞10回、技能賞1回と3賞は14回も受賞。破天荒な生き方とともに記憶に残る力士だった。

 その貴闘力に、どうすれば白鵬を止められるか、と聞いてみた。
「白鵬は立ち会いの踏み込みに鋭さがない。付け入るとしたら、そこでしょうね」

 そう前置きして、次のような策を披露した。
「なぜ、張り差しを使う力士が少ないのか。張ると、たいていの力士は、張られた方向に顔を向ける。そうなると一気に持っていけるんです。オレや琴錦(現中村親方)のような力士が現役にいたら、白鵬は嫌だったと思いますよ」

 曲者、出て来いや! といった心境か。

<この原稿は2015年1月12日号『週刊漫画ゴラク』に掲載された原稿を一部再構成したものです>


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