五輪でのスピード社製水着の着用が可能に――。
 日本水泳連盟は6月10日、都内で開かれた常務理事会で、競泳の日本代表選手が北京五輪で着用する水着については、選手の自由選択とすることを決定した。
(会見に出席した(左から)上野日本代表監督、日本水泳連盟の林会長、佐野専務理事)
 これまで、代表選手が着用する水着は、水泳連盟が契約を結ぶミズノ、デサント、アシックスの国内3社に限られていた。だが8日に終了した競泳ジャパンオープンで北島康介(日本コカ・コーラ)が男子200メートル平泳ぎで2分7秒51の世界記録をマークするなど、英スピード社製の水着「レーザーレーサー(LR)」を着用した選手の好記録が続出。こうした流れを受け、日本水連は、代表選手やコーチら現場の声を収集し検討した結果、「五輪で最高の成果を挙げるため」北京五輪での水着を自由選択とする決定を下した。
 日本水泳連盟の佐野和夫専務理事によれば、国内3社からも今回の措置について了承は得られており、サプライヤー(物品提供)契約のため、違約金なども発生しないという。

 今回の決定により選手たちは、スピード社のLRをはじめ、国内3社以外の水着も着用可能となるが、気になるのは、北島康介ら国内メーカーと個人契約を結んでいる選手だ。
 これについて佐野専務理事は「個人とメーカーとの関係となるので水連がそこに入ることはできない。個人的に解決してもらうことが一番。その過程で水連に相談があれば対処したい」と個々の選手の問題であることを強調したが、日本代表監督の上野広治常務理事は「(水着選択の)オープン化が決定して、そういうこと(希望する水着を使えない)はないと思っている。そのためのオープン化だと信じている」と、メーカー側の理解を強く求めた。

 スピード社製LRの使用に関して上野常務理事は、「これまで世界のレベルが急激に上がり、トレーニング方法や技術に関して日本は世界に遅れをとっているのではないかと一抹の不安があったが、ジャパンオープンで自信を取り戻した。この勢いを追い風にしたい」と語った上で、「アメリカやヨーロッパは(LR着用で)先に結果を出している。そういう意味ではまだ遅れをとっている。1ヶ月後にはアメリカの国内予選もあり、ランキングはどんどん変わっていくと思う。(五輪本番で)どの水着を着用するかは、選手たちが自分で当日に決めればいいと思っている。選手を北京五輪への強化に集中させるため、水着の件についてはこれで区切りとしたい」と語気を強めた。

 北京五輪に向けた水着問題はいったん決着したかたちだ。日本代表チームでは現在、ジャパンオープンでの映像やレース分析を行っているという。五輪本番まで残り約2ヵ月――。“高速水着”容認を受け、五輪で世界と互角に戦うための準備は続く。