プロボクシングの世界ダブルタイトルマッチが6月12日、日本武道館で行われ、WBC世界バンタム級王者の長谷川穂積(真正)が同級9位のクリスチャン・ファッシオ(ウルグアイ)を2RTKOで下し、自身が持つ同級日本人防衛記録を6に伸ばした。
 WBA世界スーパー・フェザー級王者のエドウィン・バレロ(帝拳・ベネズエラ)は同級7位の嶋田雄大(ヨネクラ)に7RTKO勝利をおさめ、連続KOで4度目の防衛に成功した。36歳10ヵ月で世界初挑戦の嶋田は、日本人史上年長の世界王座獲得はならなかった。
(写真:V6をリングで愛息子と喜ぶ長谷川)
 長谷川には、念願の米国進出を手繰り寄せるためにも派手な勝ち方が求められていた。
 試合開始から持ち味であるスピードを発揮し、万全の立ち上がりを見せる。そして続く2R。体の温まった長谷川はさらにスピードを上げると、左フックのカウンターを炸裂させ、ファッシオからダウンを奪う。このチャンスに的確な連打をまとめると、2R2分18秒、レフェリーが試合を止めた。長谷川の非凡なセンスが際立つ圧勝だった。
 試合後、長谷川は「ファッシオのパンチはかたかった。当たれば効くと思う。今日は敵地ということもあり、緊張して本来の力が出せなかったのではないか」と挑戦者を気づかった。しかし、無傷で終えた試合を振り返り、「まったく緊張しなかった。練習の成果をみるためにも、もう少し長く試合をしたかった。疲れていないので、すぐにでももう1試合できる」と余裕の表情をみせた。また、この勝利で国内5位タイとなる6連続防衛を達成するも、長谷川曰く「微妙」。さらなる高みを目指す日本ボクシング界のエース・長谷川の挑戦は続く。

 もうひとつの世界戦。王者バレロに、日本人史上最年長王座獲得をかけた36歳10ヵ月の嶋田が挑んだ。
 23戦23勝23KOの怪物王者バレロとまともに打ち合っては勝ち目はない――。36歳で世界初挑戦となった嶋田の作戦は、ヒット&アウェイだった。
 1Rから迫力ある連打で前に出るバレロに対し、巧みなステップとクリンチで決定打を回避する嶋田。タイミングをみて放つカウンターは王者を苛立たせた。3Rには、そのカウンターでバレロをぐらつかせる場面もあった。しかし、このカウンターが敗因となった。「欲が出てしまった」と嶋田が振り返ったように、倒そうと距離を縮めることで、バレロの連打の餌食となるシーンが増えた。そして7R1分55秒、「伝説」になりつつある王者がTKO勝利を決めた。
 嶋田は試合後、「自分がチャンピオンになることを夢みていた人に申し訳ない。ここまで来られたことに感謝の気持ちでいっぱいです」と声をつまらせ、引退を表明。キャリア20年の夢は怪物王者バレロによって打ち砕かれた。
(写真:バレロの強打を浴び、顔に無数の傷が刻み込まれた嶋田)