30日、WBA世界フライ級タイトルマッチが代々木第一体育館で行なわれ、王者の坂田健史(協栄)が3−0の判定で同級3位の挑戦者・久高寛之(仲里ATSUMI)を下し、4度目の防衛に成功した。また続いて行われたWBC世界フライ級タイトルマッチでは王者・内藤大助(宮田)が10回KOで清水智信(金子)を破り、3度目の防衛を果たした。
(写真:挑戦者・久高を下し4度目の防衛を果たした王者の坂田)
 前に出てプレッシャーをかけ続ける坂田とそれをいなしてするどいパンチ繰り出す久高。久高のパンチのスピードとキレは目を見張るものがあったが、王者の動きを止めるまでにいたらず。坂田は近距離から威力あるブローを放ち、完全に試合をコントロールする。

 3ラウンド途中、偶然のバッティングで坂田の右まぶたから出血するアクシデントがあったものの、最後まで自分のスタイルを貫いた。7ラウンドに久高が足を使い、アウトボクシングでリズムを変えようと試みるも、後半に無類の強さを発揮する坂田には及ばなかった。結局、勝負は判定となり、判定は116ー112、117ー111、118ー111で3者が坂田を支持。坂田は、4度目の防衛に成功した。

 一方の内藤対清水戦の一戦は、挑戦者の清水が、王者内藤の変則的なスタイルに惑わされず、自らのリズムで戦えるかが勝敗の行方を左右するとみられていた。
 大舞台で華麗なボクシングを披露する清水。動きが固くスピードが鈍い内藤を翻弄した。抜群の距離感で王者のパンチをはずし、カウンターを打ち込む場面も。4ラウンド終了時点で38−38が2者、39−37で清水がポイントで上回る。清水は、内藤の強打にヒヤリとする瞬間もあったが、ペースを乱すことなく8ラウンド終了後もリードをキープ(2−0)。パンチ後に頭が下がる内藤の動きを読んでアッパーを合わせるなど、随所にテクニックの高さをみせた。

 波乱が現実味を帯び始めた10ラウンド。内藤の左フックが清水のアゴをとらえ、形勢は一転。続けて内藤が右を入れると、挑戦者はリングに崩れ落ちた。内藤はここぞとばかりに一気に攻め、再び挑戦者からダウンを奪うと、勝負はついた。ワンチャンスをモノにした王者の見事な逆転勝利だった。内藤は昨年7月に王座に就いて以来、3度目の防衛で、自身が持つ国内最年長防衛記録を更新(33歳11カ月)した。
(写真:内藤の笑顔と無数の傷が激戦を物語っている)

 結果を見れば、王者の貫禄勝ちだ。しかし、清水も終盤まで内藤を完封するなどポテンシャルの高さを証明した一戦だった。距離を外した後に、細かいパンチをまとめられたら結末は違っていたかもしれない。試合後、「勝利を意識して気をぬいてしまった」と清水が反省したミスが悔やまれる。

 試合後の両王者のコメントは次の通り。
○坂田健史
「久高選手は手強い相手なので苦しい試合になると思っていた。応援のおかげで最後まで自分を信じて戦うことができた。
 このベルトは誰にも渡したくないので、毎回苦しい試合になると思うが、これからも一つ一つ戦っていきたいと思う」

○内藤大助
「判定で4R、8Rと負けていてビビった。自分自身のためというより、お客さんのため、応援してくれる人のために戦った。
 今日も相手のほうがいいボクシングをしていた。内藤有利と言われると勝てない。相変わらずボクシングが弱いなと思った。とりあえず今はゆっくり休みたい」