「K-1 WORLD MAX 2008 世界一決定トーナメント決勝戦」(1日、日本武道館)の一夜明け会見が2日、都内ホテルで行われ、5年ぶりに王座を奪還した魔裟斗(シルバーウルフ)が出席した。魔裟斗は開口一番「昨日は本当に疲れた1日だった」と語り、準決勝の佐藤嘉洋(フルキャスト/名古屋JKファクトリー)戦、決勝のアルトゥール・キシェンコ(キャプテン オデッサ)戦の疲労の色が濃かった。注目された去就については、「今は冷静な判断ができない。顔の腫れがひくまで休んで、先のことは考えます」と明言を避けた。
(写真:サングラス姿で会見に出席した魔裟斗)
 前日の試合で準決勝、決勝と2戦続けてダウンを奪われ、延長戦に突入する厳しい試合となった。「佐藤もキシェンコも強かった。足も腰も顔も痛いです。久しぶりにこんなに顔を腫らしました」。それだけ打たれたのには理由がある。これまでの魔裟斗は6度のMAXのトーナメントを経験し、卓越したディフェンステクニックを駆使したリスクの少ない戦いをしていた。

 しかし、昨夜は違った。2試合とも前進の姿勢を崩さず、手数で相手を圧倒した。「最初から倒すつもりで前に出ると決めていたし、そのためスパーリングをしてきました」「スタミナに自信があった。俺が疲れた時は、相手は動けませんよ」。大会前、“優勝宣言”を繰り返し、“過去最強”をアピールしたのは、8月の合宿の充実ぶりの表れだった。
 さらに、決勝のキシェンコ戦について、谷川貞治イベントプロデューサー(EP)の「ローキックを蹴っていればもっと楽に勝てたのに」との発言にも反論した。「昨日のキシェンコにローで対抗していたらパンチでやられていましたよ。だからあえてパンチでねじ伏せようとした」。あえて相手の領域に飛び込んだ魔裟斗の覚悟は自信の裏返しでもあっ た。

 そんな魔裟斗も2度のダウンには「ヤバイ」と感じた。判定結果を聞くときも、「どうなるかな」と勝利の確信を持てなかったが、気持ちを切らさずにいたことが勝利に結びついた。

 魔裟斗はこれまでの6年間、全てのミドル級トーナメントに出場し、“象徴”として活躍してきた。しかし、5年も王座から遠ざかっていたこと、佐藤のような強い日本人ファイターの誕生で、「進退をかける」状況に立っていた。今回ばかりは妻で女優の矢沢心さんも珍しくリングサイドから声援を送った。魔裟斗は少し照れながら、「今回は特別だったので、そばで見てほしかった」と語った。


「創成期はアンディ・フグがK-1を支えたが、今の魔裟斗選手はそれ以上の存在。こんな選手に出会えてよかった」。会見に同席した谷川EPは王座に返り咲いた魔裟斗を称賛した。試合内容に関しても、「“肉を切らせて骨を断つ”、僕がタオルを投げて試合を止めたいくらい壮絶だった。佐藤選手のように身体能力が高い選手が多く活躍するなか、魔裟斗選手は血のにじむような努力と、ハートの強さで勝ち上がった」と勝者をベタ褒めした。
(写真:魔裟斗の活躍を褒め称えた谷川EP)

 さらに谷川EPは、2009年に「MAXヨーロッパ進出」の構想があることも明かした。現在、MAXのリングで活躍する05、07年優勝のアンディ・サワー(シュートボクシング オランダ)、初代王者アルバート・クラウス(チーム・スーパープロ)らを輩出した欧州には、まだ日本で知られていない実力者がひしめいる。そのため、格闘技人気、MAX人気は高い。谷川EPは「“魔裟斗、強敵現る”ですね」と言ってニヤリと笑った。

 2009年、世界王者となった魔裟斗には前人未到の連覇に期待がかかる。去就については、まだ明らかにされていないだけに、“K-1のカリスマ”の動向から目が離せない。