31日、「戦極〜第六陣〜」(11月1日、さいたまスーパーアリーナ)の前日会見が都内ホテルで行なわれ、全11試合に出場する18選手が出席した。ライト級ワンマッチに出場する五味隆典(久我山ラスカルジム)は、「リラックスして吹っ切れた試合をしたい。油断せずにしっかり勝ちます」と、タイトルマッチ前哨戦の快勝を誓った。
(写真:自らへの挑戦者決定戦に「楽しみ」と語る五味)
 五味はセルゲイ・ゴリアエフ(TEAM BUSHIDO)と対戦する。初代PRIDEライト級王者に君臨し、世界中から狙われる存在の五味。戦極のエースとしても、第一陣でドゥエイン・ラドウィッグ(ハイ・アルティチュード)、第四陣でハン・スーファン(CMA KOREA)を危なげなく下した。今回のゴリアエフ戦に向けては「ラウンドを計算しないで、1ラウンドから前に出る」とアグレッシブな戦いを約束。長身のムエタイ出身選手に対して「やりづらそう」と印象を語り、「首相撲とヒザに気をつけたい」と警戒した。圧倒的なKO勝利で、ライト級の日本人4選手に格の違いを見せ付けられるか。

 その五味への挑戦権をかけたライト級グランプリシリーズ。ひとつめの準決勝は横田一則(GRABAKA)対廣田瑞人(GUTSMAN・修斗道場)だ。パンチに自信を持つ者同士の壮絶な潰し合いが予想される。
(写真:ライト級GPに出場する4選手。(左から)横田、北岡、光岡、廣田)

 横田はGRABAKA随一の打撃を持ち、第3代DEEPライト級王者に輝いた。キックボクシングの大会に出場し、世界王者アルバート・クラウス(チーム・スーパー プロ)から勝利をおさめた経験も持つ。第四陣(一回戦)ではボーヤン・コセドナー(WFC)を判定で下したが、勝ち進んだ他の3選手がKO・一本勝ちだったため、悔しさだけが残った。横田はグランプリファイナルに向けて「今回は言い訳ができないぐらい調子がいいので必ず優勝したい」と優勝宣言。悲願の“打倒五味”を果たすためにも、ライト級のベルトが欲しいところだ。

 迎え撃つ廣田はボクシング、柔道、相撲と多彩な格闘技経験を持つ。グランプリ1回戦ではIFL世界ライト級王者ライアン・シュルツ(チーム・クエスト)をパウンドで沈める衝撃のTKO勝ちをみせた。明日に迫った決戦に向けて、「2試合勝てるだけのスタミナつけてきました。2KOが理想なんですけど、勝てるように頑張ります」と意気込みを語った。ダークホースと目されていた廣田だが、前戦の強豪撃破の勢いそのままに一気に頂点に駆け上がりたい。

 もうひとつのライト級グランプリセミファイナルは北岡悟(パンクラスism)対光岡映二(和術慧舟會RJW)だ。共にこれまで寝技で勝利を重ねてきたただけに、一本の取り合いになるだろう。
 北岡はグラップリングに絶対の自信を持つ。第二陣でイアン・シャファー(チーム・シャファー)を50秒、第四陣でKOTC世界ライト級王者のクレイ・フレンチ(The HIT SQUAD GYM)を31秒と、連続一本秒殺劇でベスト4に名乗りを上げた。光岡戦に向けては、「戦極が大好きです。パンクラスが大好きです。総合格闘技が大好きです。自分は格闘技でしかよくしてもらっている人に恩返しができないのでリングで思い切り戦います」と感極って涙声で語った。戦極のリングで圧倒的な強さを誇るグラップラーの快進撃は、グランプリ制覇に届くのか。

 対する光岡は、PRIDE、修斗、CAGE FORCEと世界最高峰のリングを渡り歩いてきた。2007年11月には、初代DREAMライト級王者ヨアキム・ハンセン(フロントライン・アカデミー)から勝利をおさめている。戦極では、第二陣で“韓国の火の玉ボーイ”ことイ・グァンヒ(Tuhon Jeongsim Gym)、第四陣でグランプリの優勝候補筆頭、ホドリゴ・ダム(アライアンスBJJ)と2戦連続してチョークスリーパーで一本を奪って見せた。“金網の申し子”のチョークは北岡戦でも炸裂するのか。

 ライト級と併せて開催されるミドル級グランプリの準決勝は中村和裕(吉田道場)対佐々木有生(GRABAKA)、ジョルジ・サンチアゴ(アメリカン・トップチーム)対シアー・バハドゥルザダ(ゴールデン・グローリー)だ。
(写真:ミドル級GPに出場する4選手。(左から)バハドゥルザダ、佐々木、中村、サンチアゴ)

 会見に姿を現した中村は、目がくぼみ、頬がこけて、かなり減量に苦しんだ様子だった。これまでPRIDE、UFCでヘビー級として戦ってきたため、ミドル(83キロ)での試合の負担は計り知れない。それでもグランプリ初戦となった第五陣では、スピードとキレのある打撃でポール・カフーン(ゴールデン・グローリーUK)を圧倒し、4強にコマを進めた。明日に迫った佐々木戦に向けて、「今持っている情熱をできるだけ多くの人に伝えられる試合がしたい。佐々木選手がいることで自分の強さが表現できると思う」と力強く語った。この日のために磨いてきた右フックを武器に、産まれたばかりの愛娘に勝利を捧げたいところだ。

 対する佐々木はグランプリ一回戦で、パンクラスのエース近藤有己をチョークスリーパーで葬り、戦極初の日本人対決に勝利した。佐々木にはこのトーナメントで負けられない理由がある。第二陣で敗れたサンチアゴへの雪辱、そして、グランプリの先にある同門・三崎和雄とのタイトルマッチの実現だ。「いい試合ができるように一生懸命頑張りたい」と冷静に語ったが、内心はグランプリ制覇に燃えているだろう。

 もう一方の準決勝に臨むサンチアゴはブラジリアン柔術の黒帯保持者で卓越したグラップリングと相手を一撃で沈める打撃を併せ持つ。第二陣では佐々木の打撃をことごとくかわし、腕十字固めで逆転一本勝ちをおさめた。9月に開催された第五陣ではディフェンス能力の高いローガン・クラーク(ミネソタ・マーシャル・アーツ・アカデミー)相手に多彩な技で攻め続け、最後は肩固めで完勝。グランプリ制覇の最右翼にいるファイターだ。
 対するバハドゥルザダは第一陣で、同階級第一人者・三崎に敗れたものの、打撃で圧倒するなど、善戦をみせた。グランプリ初戦ではエヴァンゲリスタ・サイボーグ(シュート・ボクセ・アカデミー)の負傷により、戦極史上最短となる22秒でTKO勝利。実力の全貌が明らかになっていない不気味な存在といえる。

 今年3月に産声を上げた戦極。第六陣はライト級、ミドル級のグランプリファイナル、エース五味の登場と充実した内容となった。デビューイヤーのフィナーレとなる11月1日の“聖地”さいたまスーパーアリーナは、戦極の真価が問われる1日となりそうだ。

「戦極〜第六陣〜」
2008年11月1日、さいたまスーパーアリーナ
開場14:00 開始16:00

<第1試合>※ミドル級グランプリシリーズ2008セミファイナル
シアー・バハドゥルザダ(ゴールデン・グローリー)×ジョルジ・サンチアゴ(アメリカン・トップチーム)
<第2試合>※ミドル級グランプリシリーズ2008セミファイナル
中村和裕(吉田道場)×佐々木有己(GRABAKA)
<第3試合>※ライト級グランプリシリーズ2008セミファイナル
横田一則(GRABAKA)×廣田瑞人(GUTSMAN・修斗道場)
<第4試合>※ライト級グランプリシリーズ2008セミファイナル
北岡悟(パンクラスism)×光岡映二(和術慧舟會RJW)
<第5試合>※ミドル級グランプリシリーズ2008リザーブマッチ
竹内出(SKアブソリュート)×ジョー・ドークセン(チーム・エクストリーム)
<第6試合>※ライト級グランプリシリーズ2008リザーブマッチ
ホルヘ・マスヴィダル(アメリカン・トップチーム)×ハン・スーファン(CMA KOREA)
<第7試合>※ライトヘビー級ワンマッチ
アントニオ・ホジェリオ・ノゲイラ(チーム・ノゲイラ)×モイス・リンボン(ヨーロッパ・トップチーム)
<第8試合>※ライトヘビー級ワンマッチ
キング・モー(チーム・クエスト)×ファビオ・シウバ(シュート・ボクセ・アカデミー)
<第9試合>※ライト級ワンマッチ
五味隆典(久我山ラスカルジム)×セルゲイ・ゴリアエフ(MMA BUSHIDO)
<第10試合>※ミドル級グランプリシリーズ2008ファイナル
第1試合の勝者×第2試合の勝者
<第11試合>※ライト級グランプリシリーズ2008ファイナル
第3試合の勝者×第4試合の勝者