4日、さいたまスーパーアリーナで「戦極の乱2009」が開催され、戦極ライト級チャンピオンシップでは北岡悟(パンクラスism)が五味隆典 (久我山ラスカルジム)を1ラウンド1分41秒、アキレス腱固めでタップアウト勝ちし初代チャンピオンの座に就いた。また、戦極ミドル級チャンピオンシップではジョルジ・サンチアゴ(アメリカン・トップチーム)が三崎和雄(GRABAKA)を5R3分26秒、チョークスリーパーによるレフリーストップで下し、チャンピオンベルトを獲得した。注目されたライトヘビー級ワンマッチは菊田早苗(GRABAKA)が判定2−1で吉田秀彦(吉田道場)を破った。
(写真:試合後、五味(左)に称えられる北岡)
 ライト級のタイトルを賭けた一戦は、1ラウンドから北岡が変則的な動きを見せ、五味の動揺を誘った。対日本人無敗を誇る五味に対し臆することなく挑んだ北岡は、昨年の戦極では3つの秒殺を含む4戦全勝という成績だけに勢いがあった。「簡単に組ませてもらえるとは思っていなかった」と試合後に北岡が語ったが、五味のタックルから組み合いになり、バックをとった北岡がかかとを狙う。一旦は完全にきめることができなかったが、再度深くポジションを取ると、一気に締め上げる。ここで五味は堪らずにタップアウト。ライト級トーナメントから「Road to 五味」を一歩ずつ歩んできた男が、格闘界のトップランナーを超えた瞬間だった。

「チャンピオンになったことは嬉しい気持ちと不思議な気持ちの半々。これで責任と使命ができたと感じています。今日は僕の挑戦を受けてくれた五味選手に勝つことができたので、防衛戦は挑戦者として五味さんに僕と戦ってもらいたい」と早くも五味との再戦を口にした。

 一方、敗れた五味は右足を負傷したため、歩く事もままならない状態で会見に臨んだ。「もう一度トレーニングを積んで外国人選手や北岡選手とやりたい。ここ2年間は自分でジムを始めてトップクラスのトレーニングができなかった。また前のような状態に戻していきたい。今日の勝利で彼(北岡)は名実ともに戦極のエースになったと思う。タップはしたくなかったが、今日のタップは彼の実力を認めたタップです」と完敗の試合について語った。北岡との再戦については「落ちついて今後のことは考えたい」と明言を避けた。
(写真:インタビュー後病院へ直行した五味)

 もう一つのタイトルマッチはサンチアゴが三崎を下し、ミドル級初代王者に輝いた。序盤から打撃戦となった一戦は、積極的に三崎が攻めペースを握った。3ラウンド以降はローキックを有効に使い、優位に試合を進めた。しかし、ファイナルラウンドとなる5ラウンドに落とし穴があった。サンチアゴがタックルからマウントに入る。三崎も一旦はうまく逃れたが、サンチアゴにバックを取られ、チョークスリーパーでフィニッシュ。三崎にとっては残り1ラウンドまでテンポよく進んでいただけに、惜しまれる一戦となった。

 初代ミドル級王者となったサンチアゴは「三崎はとてもタフであきらめない選手だった。より強いハートを持ったほうが勝つと思っていた。自分が勝つことができて嬉しい」とチャンピオンとなった喜びを口にした。「初めは打撃でいこうと考えていたが、三崎にはスピードがありなかなかうまくいかなかった。終盤はグラウンドで勝負しようと作戦を変えたのがよかった」とタイトルマッチの勝因を語った。

「戦極の乱2009」ではタイトルマッチ以上に注目のワンマッチ、吉田秀彦対菊田早苗のカードが組まれた。お互いを知り尽くした先輩・後輩同士の対決は菊田に軍配が上がった。戦前の予想とは異なり、パンチの応酬となった序盤では吉田がパワーで菊田を追い詰めたが、最終ラウンドの3ラウンドでは菊田が吉田のマウントポジションを取って攻め続け、判定勝ちを収めた。

 試合後、菊田は開口一番、「非常に作戦の立てづらい試合だった」とコメントした。「吉田さんに負けている選手は(吉田の)得意な形にはめられていた。そうならないように心がけた。今日の試合は柔術とケンカを併せた戦い方をした」「柔道では落ちこぼれだった自分が、瀧本選手、吉田選手と2試合続けて五輪金メダリストを倒すことができたのは嬉しい。特に吉田さんのことは20年以上前から知っている。中学から見てきた人と37歳になって戦うというのは運命的なものを感じた」と吉田との一戦を振り返った。
(写真:想定外の打撃戦で拳をアイシングする菊田)

 2人のチャンピオンが誕生した「戦極の乱2009」。北岡とサンチアゴを中心に今年の戦極が展開されることは間違いない。2年目に入った戦極は、総合格闘技界に更なる旋風を巻き起こすことができるのだろうか。

<オープニングファイト第1試合>
○入江秀忠(キングダム・エルガイツ)
2R4分21秒 TKO(マウントパンチ)
×加藤実(フリー)

<オープニングファイト第2試合>
○マキシモ・ブランコ (ベネズエラ)
1R38秒 レフェリーストップ(踏みつけ)
×井上誠午(和術慧舟會GODS)

<第1試合>※ヘビー級ワンマッチ
○チェ・ム・ベ (チーム・タックル)
2R2分22秒判定 TKO(スタンドパンチ)
×デイブ・ハーマン(F1 Fight Team)

<第2試合>※ライト級ワンマッチ
○光岡映二(和術慧舟會RJW)
1R4分22秒 ギブアップ(腕十字固め)
×セルゲイ・ゴリアエフ(MMA BUSHIDO)

<第3試合>※ヘビー級ワンマッチ
○アントニオ・シウバ(アメリカン・トップチーム)
1R1分42秒 TKO(レフェリーストップ)
×中尾“KISS”芳広(TEAM TACKLER)

<第4試合>※ライトヘビー級ワンマッチ
○キング・モー(チーム・クエスト)
1R3分54秒 TKO(グラウンドパンチ)
×内藤征弥(和術慧舟會RJW)

<第5試合>※ライトヘビー級ワンマッチ
○菊田早苗(GRABAKA)
3R判定 2−1
×吉田秀彦(吉田道場)

<第6試合>※戦極ミドル級チャンピオンシップ
○ジョルジ・サンチアゴ(アメリカン・トップチーム)
5R3分26秒 TKO(チョークスリーパー)
×三崎和雄(GRABAKA)

<第7試合>※戦極ライト級チャンピオンシップ
○北岡悟(パンクラスism)
1R1分41秒 タップアウト(アキレス腱固め)
×五味隆典(久我山ラスカルジム)