第2回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が5日、開幕し、1次ラウンドA組の初戦で日本代表が中国代表と対戦した。日本は中国の4人の投手陣の前に5安打と苦しんだが、3回に村田修一の2ランなどで3点、6回に1点を加え、4−0で勝利した。日本は7日に2次ラウンド進出をかけて、韓国−台湾の勝者と戦う。

 ダルビッシュ、4回46球で零封
中国代表      0 = 000000000
日本代表      4 = 00300100×
(中)●李晨浩−陳俊毅−孫國強−劉凱
(日)○ダルビッシュ−涌井−山口−田中−馬原−藤川
本塁打  (日)村田1号2ラン
(写真:攻守に活躍をみせた村田)
 勝つには勝ったが楽な試合ではなかった。前回大会では18−2と猛打が爆発した相手に、わずか5安打4得点。それでも北京メダルなしの雪辱に燃える五輪経験者たちが日本を勝利に導いた。

 まずは先発のダルビッシュ有だ。北京でも初戦のキューバ戦に先発し、4失点。敗戦投手になり、チームに勢いをつけられなかった。この日は初球に148キロのストレートを投げ込むなど、球そのものに勢いがあった。初回を10球で終えると、少ない球数でどんどん中国打線を斬っていく。

「4回をしっかり、球数も少なく終わらせたのでよかったです」
 全てのイニングを3人で打ち取り、前日に捕手の城島健司が「理想」と語っていた4回まで投げきった。要した球数はわずか46球。50球を超えなかったため、中1日で7日の試合での登板も可能になった。

 もうひとりは村田修一だ。3回、青木宣親のヒットにセンターのエラーが重なり、日本が1点を先制。なおも2死2塁の場面だった。「前の打席に好機で倒れた(1回、2死2、3塁で右飛)。ランナーを還すことだけを考えた」。ファールで粘り、フルカウントからの8球目、フォークをフルスイングすると、弾丸ライナーの打球がレフトスタンドへ突き刺さる。3−0。日本に流れを引き寄せる一発だった。

 プロに入って初の代表選出となった北京五輪。直前合宿中に体調を崩し、本番では23打数2安打と散々な成績に終わった。「自分の形を崩して後悔する打席が多かった」。自分の持ち味を出せなかった反省を踏まえ、「チームの勝利を最優先するが、自分のスタイルを貫くことを心がけている」。第1打席もファールにはなったがレフトへ大飛球を放ち、ホームランの後の3打席目も外野に大きな当たりを飛ばした。

 守っては8回、8番・賈徳龍が放った三塁線への鋭いライナーを飛びついてキャッチ。「今は充実している」。サムライジャパンの中軸として大活躍の予感を感じさせる初戦だった。

 一方、快音が聞かれなかったのが7番から1番とつながるメジャーリーガー軍団だ。福留孝介こそ4四球を選んだものの、城島は2回の無死1、2塁のチャンスに併殺打。岩村明憲も6回の無死1、2塁の場面で見逃し三振に倒れた。そして極めつけはイチローだ。5打数無安打。内野ゴロ4つに内野フライが1つと、外野へボールを運ぶこともできなかった。

 確かに中国投手陣の出来は予想以上によかった。球威はないが、効果的にインコースを突き、丁寧にボールを低めに集めた。ただ、日本がどこかで1本出ていればもっと一方的な展開になったのも事実だ。「もう少し、点は取れた」。指揮官にとっても、ドームに詰めかけた43,428人の観衆も満足いく野球ではなかった。

「この大会は2戦目がもっとも大事な試合と位置づけている。今持ちうるジャパンの最高の力をもって、敵と戦いたい」
 7日のゲームに勝てばサンディエゴ行きのチケットを確保する。韓国、台湾のどちらが勝ちあがっても、今日より厳しい戦いになるだろう。2チームより日本が上回っているものは何か。そのひとつはメジャーリーガーの人数と実績だ。先発が予想される松坂大輔も含め、メジャーの力が日本の運命を左右するかもしれない。

○原監督
 中国チームの投手力がよかった。マークはしていたが、それ以上の投球をされてしまった。ピッチングスタッフ、特に先発投手のダルビッシュはたのもしく見えた。球数制限があるので、50球以下でダルビッシュが終えられたのは収穫。投手が主導権を握ると勝ちに近づくことを改めて実感している。
(攻撃に関しては)満足しているかと言われれば、もう少し点は取れた。満足はしていない。国際試合はこういうもの。(今日の結果で)チーム全員が身も心も引き締まった状態で戦えると考えたい。

○イチロー(1番スタメンも5打数無安打)
 ヘコみました。(試合後に)ドーピング検査を受けたことにヘコみました。流れが悪い。打ちたい気持ちは痛いほど伝わっているはずですけど。もどかしさがなかったら野球辞めますよ。ただ、焦りの感情とは違う。(報道陣は)焦りという単語を使ったことに焦ってほしい。とりあえず勝つことが最優先。僕はそう考えている。

(石田洋之)