ボクシングのWBC世界フライ級タイトルマッチが29日、さいたまスーパーアリーナで行われ、挑戦者の亀田興毅(亀田)が王者の内藤大助(宮田)を3−0の判定で破り、王座奪取に成功した。亀田WBAライトフライ級に続くタイトル獲得で、日本ジム所属選手では7人目の2階級制覇。敗れた内藤は6度目の防衛に失敗し、自身が持っていた日本人の最年長防衛記録と同階級最多防衛記録(大場政夫の5回)を更新できなかった。
 弟・大毅がとてもボクシングとは呼べない反則を連発して内藤に敗れてから2年。その時から始まった因縁に亀田はしっかりしたボクシングで終止符を打った。

 立ち上がりから冷静な試合運びだった。2日前の調印式で珍しくKO宣言を封印して臨んだ亀田は慌てず距離をとり、カウンター狙いに徹する。1R終盤には飛び込みながら左ストレートを放ち、チャンピオンをのけぞらせた。2Rもショートの左カウンターが内藤の鼻をヒット。出血した鼻は変形し、時間が経つとともに大きく膨れ上がった。狙い通りの戦いに亀田は1ラウンド、2Rとも終了のゴングが鳴ると、両手をあげて自信をみせる。

 一回りも年齢の若い相手だけに早く決着をつけたい王者はどんどん前に出て距離を詰める。3Rには右フックが亀田のほおをとらえ、コンビネーションのパンチも当たり始めた。4Rはコーナーに追い込んだところをボディ4連発。挑戦者も負けじとボディを返し、見ごたえのある打撃戦を披露する。序盤4Rを終えての採点は2者が同点、1者が2ポイント差で亀田リード。ほぼ互角の情勢だった。

 チャンピオンの右が入り始めたことで亀田は中盤、ガードを固めて対応する。低い姿勢から中に入ろうとする内藤に対して、確実にパンチを返し、有効打を許さない。7Rには、相手がコーナーに詰めてきたところを、うまく体を入れ替えて逆襲。攻めあぐむ王者に対して、距離をとる戦術を守り抜き、8Rを終えた時点では3名のジャッジがすべて亀田を支持した。

 防衛には逆転が不可欠になった内藤は強引に左右のフックで挑戦者のガードをこじあげようと試みる。しかし、亀田は頭を下げて突っ込んでくる王者をアッパーで起こすなど、相手の攻めを消していく。リードに気をよくしたのかフットワークも再び軽快になり、細かいパンチが王者の顔を捉える。内藤は鼻のみならず、右目の上もカットした。

 そして迎えた12R、ラスト3分間の健闘を誓うかのように、両者は肩を組んでから拳を交える。激しい打ち合いとなるも、互いに一歩も引かない。ただ、一発を狙う内藤のパンチを最後までかわしきったことで、挑戦者の優位は明らかだった。試合終了のゴングが鳴った瞬間、亀田が勝利を確信したかのようにガッツポーズをみせた半面、内藤は力尽きたようにレフェリーにもたれかかった。
 
 判定は2者が117−111、1者が116−112。ラウンドを重ねるにつれ、リードを広げる快勝だった。新チャンピオンとして名前が告げられた瞬間、亀田はバッタリとリングに倒れこみ、涙を流しながら喜びを表現した。23歳で早くも2つ目のベルト。「今は言葉はない」と感無量ながらも「まだまだ夢の途中」と次の目標がみえてきた。日本人初の3階級制覇へ、その可能性を感じさせるような勝利だった。