「K-1 WORLD GP2009 FINAL」が5日、横浜アリーナで開催され、セーム・シュルト(オランダ/正道会館)が3連覇を果たした2007年以来、2年ぶり4度目の優勝に輝いた。4回の優勝はアーネスト・ホースト(オランダ)に並び、史上最多タイ。しかも、準々決勝から決勝のバダ・ハリ(モロッコ/ショータイム)戦まで3試合とも1RKOで相手を仕留める圧巻の勝利だった。これは98年のピーター・アーツ(オランダ)以来の快挙。3試合の合計試合時間353秒も、その時のアーツの最短優勝レコード(403秒)を上回り、記録づくめのGP制覇となった。
(写真:王座に返り咲き、笑顔をみせるシュルト)
 絶対王者が完全に強さを取り戻した。
 準々決勝ではジェロム・レ・バンナ(フランス/Le Banner X tream Team) をキック2発で倒すと、準決勝は連覇を目指すレミー・ボンヤスキー(オランダ/チーム・ボンヤスキー)と対戦。開始早々に左フックをくらい、ダウンを喫してしまう。しかし、「8カウントまで入ったが、ダメージはなかった」と冷静だった。一気に決めにかかるボンヤスキーに対し、ヒザ蹴りで逆襲。コーナーに追い詰めて、パンチ、キックを浴びせてダウンを奪った。なんとか立ち上がったボンヤスキーだが、今度は212センチの長身から繰り出された右ローキックをまともに受け、マットに崩れ落ちた。

 決勝の相手はバダ・ハリだ。こちらも準々決勝でルスラン・カラエフ(ロシア/フリー)を1R秒殺。準決勝では総合格闘技から乗り込んできたアリスター・オーフレイム(オランダ/ゴールデングローリー)を1Rで退け、昨年大みそかに「Dynamite!!」で敗れた雪辱を果たす。昨年のGP決勝では、ボンヤスキーの頭を踏みつけ、前代未聞の反則負けを喫した。その汚名をそそぐべく、圧倒的な強さで決勝にコマを進めてきた。5月のワンマッチではシュルトを1RKOしており、念願のGP初制覇で“政権交代”が実現するか、注目が集まった。

 雌雄を決する戦いは立ち上がりから目の離せない展開になる。キックで距離をとろうとするシュルトに対し、バダ・ハリはどんどん前へ出て、左、右とフックを浴びせる。しかし、この大会を3度制した実力者は一瞬のスキを見逃さなかった。相手が前がかりでガードが甘くなったところへ左ストレート一閃。これがバダ・ハリの顔面をとらえ、尻もちをつかせた。

 こうなると形勢は一転。バダ・ハリはシュルトの攻撃をかわしてこらえようとするものの、左ハイキックを首に受け、2度目のダウンを喫する。後がなくなり、バダ・ハリは反撃を試みようと襲いかかるも、シュルトは慌てない。今度は左ミドルをボディに突き刺し、決着をつけた。
(写真:3度目のダウンで試合終了)

「これまでは勝っても価値がないと言われてきた。今日は価値があることを証明できた」
 きれいな顔で会見に臨んだ王者は終始、上機嫌。実は大会に向けたトレーニングで左足のケガに見舞われ、パンチを磨いてきたが、「今日は足技が多かったので、トレーニングの成果は見せられなかったよ」と余裕だった。優勝賞金40万ドルの使い道については、「口座にダイレクトで振り込まれることだけはやめてほしい。現金でもらって、それを前にしてから使い道を考えたい」と笑っていた。

 いずれも1R勝利で決勝に進んだ両者に引きずられるように、今回のトーナメントは7試合中6戦がKO決着。谷川貞治イベントプロデューサーも「過去にないくらい非常にいい大会。スーパーファイトからリザーブファイトまで、すごくレベルが高かった。格闘技がおもしろいなと世界中から絶賛してもらえる内容だったと思う」と満足そうだった。

 試合結果は以下の通り。

<オープニングファイト> 
〇寒川慶一(S.F.K)
3R判定 3−0
×梶原龍児(チームドラゴン)

<オープニングファイト> 
〇シング“心”ジャディブ(インド/パワーオブドリーム)
2R1分36秒 KO
×上原誠(士魂村上塾)

<オープニングファイト> 
〇ヤン・ソウクップ(チェコ/極真会館)
3R判定 3−0
×高萩ツトム(チームドラゴン)

<第1試合> ※リザーブファイト 
〇ピーター・アーツ(オランダ/チーム・アーツ)
3R判定 3−0
×グーカン・サキ(トルコ/チームレベル)

<第2試合> ※WORLD GP FINAL8
〇バダ・ハリ(モロッコ/ショータイム)
1R38秒 KO
×ルスラン・カラエフ(ロシア/フリー)

<第3試合> ※WORLD GP FINAL8
〇アリスター・オーフレイム(オランダ/ゴールデン・グローリー)
1R1分6秒 KO
×エヴェルトン・テイシェイラ(ブラジル/極真会館)

<第4試合> ※WORLD GP FINAL8
〇セーム・シュルト(オランダ/正道会館)
1R1分27秒 KO
×ジェロム・レ・バンナ(フランス/Le Banner X tream Team)

<第5試合> ※WORLD GP FINAL8
〇レミー・ボンヤスキー(オランダ/チーム・ボンヤスキー)
3R判定 3−0
×エロール・ジマーマン(キュラソー島/ゴールデングローリージム)

<第6試合> ※リザーブファイト
〇ダニエル・ギタ(ルーマニア/KAMAKURA Gym)
3R36秒 KO
×セルゲイ・ハリトーノフ(ロシア/ゴールデングローリーロシア)

<第7試合> ※WORLD GP FINAL4
〇バダ・ハリ
1R2分14秒 KO
×アリスター・オーフレイム
(写真:ハイキックでオーフレイムがコーナーに吹っ飛んだ)

<第8試合> ※WORLD GP FINAL4
〇セーム・シュルト
1R2分38秒 KO
×レミー・ボンヤスキー

<第9試合> ※スーパーファイト
〇タイロン・スポーン(スリナム/ブラックレーベルファイトクラブ)
3R判定 3−0
×京太郎(チームドラゴン)

<第10試合> ※WORLD GP FINAL
〇セーム・シュルト
1R1分48秒 KO
×バダ・ハリ