昨季、118試合で37本塁打を放ち、セ・リーグのホームラン王に輝いたブラッド・エルドレッドは右ヒザの負傷により、開幕には間に合わない見通しだ。

 好不調の波が激しいエルドレッドだが、一振りで勝負を決められる破格のパワーは魅力的だ。24年ぶりの優勝を狙うカープにとって、エルドレッドの不在は大きい。

 しかし、モノは考えようだ。たとえは悪いが、死んだ子の齢を数えても仕方がない。「災い転じて福と為す」には、エルドレッド不在の得点パターン――すなわち、“つなぐ野球”に徹するべきだろう。

 ホームランと三振が背中合わせのエルドレッドは、元々、4番タイプのバッターではなかった。同僚の丸佳浩は「(エルドレッドが)7番くらいを打てばいい打線になる」と語っていた。1987年に39本塁打でホームラン王を獲得したリック・ランセロッティも“ランスにゴン”と呼ばれたように、持ち味は意外性。下位にいるからこそ、他球団には脅威だった。

 幸い新外国人のヘスス・グスマンの評価が高い。彼は典型的なクラッチヒッターで、2012年には代打でナ・リーグ最多の12打点をあげている。

 エルドレッド不在、そして、もうひとりの外国人ライネル・ロサリオの出遅れで、開幕後しばらくはグスマンが中軸に座る可能性が高い。上位がつなぎ、ランナーをためてからグスマンを迎えるというパターンが、カープにとってはベストだろう。一発よりも連打である。

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)

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