黒田博樹の復帰後、初登板となった3月8日は、天候にもめぐまれ、広島はお祭り騒ぎだった。いや、めでたいことである。

 ただ、東京ヤクルトの打線には、かんじんな1番・山田哲人と4番・雄平がいなかったけど。侍ジャパンに参加するためチームを離れていたのだ。とはいえ、広島から選出された丸佳浩、菊池涼介、會澤翼は全員、スタメン出場していた。

 もちろん、黒田も十分わかっていて「向こうも全員が主力というわけではない」とコメントしている。4回1/3をパーフェクトという絵に描いたような結果の復帰戦だったが、まわりの喧騒、絶賛をよそに、登板後、実に冷静な発言をしたところに、むしろ、黒田の賢明さを見た。

 なかで、一番安心したのは受けた捕手・會澤についての評価である。
「すごくいいリードをしていましたし、(略)テンポも良くてキャッチングも良かった」(「日刊スポーツ」3月9日付)
 
 會澤のキャッチング、リードは、たしかによくなっていると思うのである。黒田のこのコメントにお世辞は入っていないだろうから、會澤もついに正捕手としての技量を身につけたといっていいのだろう。

 今季、會澤が去年のような故障離脱なく出場できるかどうかは、「優勝」を意識して戦うカープにとっては、非常に大きなカギになる。

 ところで、會澤といえば、前田健太や菊池、丸らとくらべれば、どちらかといえば脇役だろう。ただし、長いシーズンを戦うには、脇役は重要である。

 今、気になるのは戸田隆矢だ。2軍に落ちている。たしかに練習試合などを見ても、昨年後半に見せたような球威がない。一番状態のいい時は150キロ近く出たスピードも、すっかり落ちてしまっている。

 昨年の疲れなのだろうか。ただ、彼は貴重な左腕である。先発も中継ぎもできる。必ずや必要になるときがくる。開幕に間に合わなくてもいいから、もう一度、つくり直してほしい。

 中継ぎは中田廉が離脱している。8日の試合では一岡竜司がなかなかいいボールを投げていて安心したけれども、彼とて故障明けだ。1枚でも多くほしい。その意味では今村猛の復活も重要だと思うが、どうも明るいニュースが聞こえてこない。

 打者でいうと、鈴木誠也、美間優槻、野間峻祥らが緒方孝市監督の抜擢にこたえて活躍しているが、実はもうひとりいる。堂林翔太である。

 堂林も、なかなか結果が出ない。どこか、うつむき加減に見える。同じスイングをくりかえして凡退しているようにも見える。しかし、たとえばサードが美間で1年を乗り切れるものではあるまい。新井貴浩がいるぞ、と言われそうだが、そこは堂林にも貪欲にチャンスをうかがってほしい。

 前回ふれた木村昇吾もそうだし、離脱中のライネル・ロサリオもそうだ。

 今、脇役にまわっている彼らが、たとえば5月からでも結果を出し始めたら、今年のカープは本当に強いだろう。そういう不屈の精神を発揮してほしいものだ。

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんが第2週木曜を担当します)
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