CSを戦っているカープにあって、試合のたびに評価を上げているのが2年目の菊池涼介である。

 ここまでの3試合で12打数8安打、1打点、1盗塁。何人もの他球団ファンから「イキのいい選手が出てきたね」「名前は知っていたけど、あんなにいい選手とは……」と言われた。悪い気持ちはしない。

 バッティング以上に進境著しいのが、今季、補殺のシーズン日本記録(528)をつくった、その守備力だ。18失策はセカンドではリーグ最多だが、逆に言えば、それだけボールに触れる機会が多い証拠である。名手の向こう傷のようなもので、何ら恥じることはない。

 カープファンからすれば、まるで牛若丸のような菊池の軽快なフィールディングは“見慣れた光景”だが、他球団のファンには新鮮に映るようだ。
「一、二塁間の打球の速いゴロを捕ったかと思ったら、今度は二遊間のボテボテのゴロをさばく。まるでファーストとショートの間に、2人の内野手がいるみたい」
 こう言って目を丸くしていた者もいた。

 現役時代、セカンドでゴールデングラブ賞に4度輝いた仁志敏久は「基本をもっと重点的にやれば、世界でも飛び抜けた内野手になる可能性を秘めている」と素質の高さを認めている。今回、仁志は小久保裕紀監督が率いる新生・侍ジャパンの内野守備走塁コーチに就任したため、11月の台湾遠征では代表入りする可能性も出てきた。

 高校は長野の武蔵工大二高(現・東京都市大塩尻高)。大学は岐阜の中京学院大。いわゆる野球の名門ではない。探せば逸材はいるものだ。菊池の才能に大学2年時から目をつけたという松本有史スカウトにも拍手を送りたい。

(今月からこのコーナーはリニューアル! 二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)
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