梵英心という男には頭が下がる。今季は3番、5番、6番、7番を相手投手によって打たされた。それでいて打率3割1分、6本塁打、42打点(10月2日現在)という成績は見事の一語である。

 元々はリードオフマンだ。ルーキーイヤーの2006年には打率2割8分9厘、8本塁打、36打点の好成績で新人王に輝いている。10年には盗塁王とゴールデングラブ賞を獲得した。

 しかし最近は5番を打つケースが増えてきた。6月に入団したキラ・カアイフエが4番に座っていた時には、後ろで新外国人を支えた。

 5番が弱ければ、4番は勝負を避けられる。キラが4番で結果を残したのは、梵が存在感を発揮したからだ。

 昨季、“飛ばないボール”ながら梵は10本のホームランをマークした。強振せずボールの芯を射抜くようなコンパクトなスイングを習得したようだ。

 打順が変わっても、その打順に合わせたバッティングをしないのが梵の最大の長所である。トップを打とうが、3番を打とうが5番を打とうが「オレにはこのバッティングしかできない」というこだわりと割り切りが梵のバッティングからは見てとれる。最近はすっかり“仕事師”のイメージが板に付いてきた。

(今月からこのコーナーはリニューアル! 二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)

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