ついには、大竹寛もピンチなのだそうだ。背中の張りを訴えて、先発予定だった4月29日からの阪神3連戦には帯同しなかった。うーむ。

 前田智徳、ブラッド・エルドレッドの骨折はもちろん痛い。復活への光明が見えているとはいえ、前田健太、野村祐輔の先発2本柱もそれぞれ故障を抱えているとあっては、悲観するなと言うほうが無理というものだ(前田の5月1日の復帰登板はたしかにすばらしかったけれども、問題は今後である。今季は、腕の状態を心配しながら登板を続けることに変わりはあるまい)。

 このような感想にまったく異論はないが、しかし、だからこそ人生は面白い! と思い直してみませんか。

 たとえば、4月29日の阪神戦。カープは信じられない反発力を見せて勝ったではないか。

 3点差を追いつき、同点にしたかと思いきや、8回裏に4-5と再び1点リードを許す。あーあ、万事休すかと覚悟したところで、9回表に相手のクローザー久保康友から2点をもぎとって再逆転したのである(もっとも、ライト福留孝介のまずい守備に助けられたのだが)。こんな勝ち方、そうはできない。

 そういえば、4月21日の巨人戦も同じような展開だった。あの強い巨人に1-4とリードされたのを、7回裏に4-4に追いつき、延長11回に松山竜平のボテボテの内野ゴロ(結果は内野安打)で1点入れてサヨナラ勝ちしたのである(これは三塁走者・安部友裕のスタートがよかった)。

 まぁ、あえて、すばらしく気持ちのいい2試合を選んで思い出してみたわけだが……。ただ、忘れてはいけないのは、21日のサヨナラは梵英心が1死から四球を選んだこと、29日の逆転は先頭の中東直己が三塁強襲安打で出たことがきっかけになっている。

 4番でも代打の切り札でもない地味な存在がしぶとく塁に出ること、ここから粘りを発揮することがカープのようなチームにはいかに重要か、をこの2試合は示してくれている。

 これぞカープの進む道、とでも言うべきか。だって阿部慎之助も坂本勇人もウラディミール・バレンティンもいないチームなのだから。

 ただし、懸念はある。
 どちらの試合にも登板している投手が、ひとりだけいるのだ。今村猛である。

 21日は2回、29日は1回。あの開幕戦、巨人戦でのリリーフ失敗に始まって、とにかく4月から今村の登板は多い。

 今村はご存知の通り、WBCからずっと投げ続けている。いくらタフでも、どんな投手でも、酷使が過ぎれば故障する。万が一、今村まで故障してしまったら、もはや小さな粘りの積み重ねさえ効かなくなる。

 この点だけは、いくら強調しても、し過ぎることはない。だって、巨人以外の他チームを見れば、勝負どころが後半戦にくるのは明らかなのだから。

(このコーナーは二宮清純と交代で毎週木曜に更新します)
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