たとえば、4月2日の東京ヤクルト戦。ヤクルトが初回に1点を先制して1-0で迎えた3回裏のカープの攻撃である。

 先頭の菊池涼介は凡退したが、続く丸佳浩がショート内野安打で一塁に生きる。相手投手は左腕・村中恭兵。カープの打順は廣瀬純、ブラッド・エルドレッドと右打者の3、4番にまわった。

 お、ここは同点に追いつくチャンスかな……と思ったか思わないかのうちに、いきなり初球から丸がスタートを切って、二塁は余裕でアウト。たちまち2死無走者となってしまった。

「え? なんなんだ、これは?」と感じませんでしたか。そのあと廣瀬が二塁打を打ったから言うのではない。二塁があれだけはっきりアウトだったということは、丸のスタートが良かったはずはない。

 そこまでの無理をして走るところだろうか。この違和感は、いったい何なのだろう。

 あるいは、3月29日の開幕戦(対巨人)。先発ブライアン・バリントンは6回まで巨人打線を2失点でなんとかしのいでいた。で、7回表に丸の犠牲フライで3-2と1点勝ち越し。正直、開幕戦は勝ったと感じた。

 個人的にはバリントンは6回までで、7回からはブルペン勝負かと思った。ただ、たしかに好投のバリントンは、まだ球数70球そこそこ。続投は納得できる(とはいえ、バリントンには開幕戦で、しかも巨人相手ゆえの疲労はたまってきていたと思う)。

 7回裏、案の定、阿部慎之助、村田修一に連打を浴びるも、高橋由伸、ホセ・ロペスを打ち取って2死二、三塁。バリントン、粘る。

 次打者は脇谷亮太。「バリントン、あとひとりだけガンバレ!」と叫んでいたら、あれ、投手交代。

 この場面、左の脇谷に左投手ではなく、右投手の今村猛を登板させた采配について、さまざまな論評があった。今村が逆転打を浴びたのでそれも致し方なかろう。

 しかし、それより前に、バリントンは6回降板か、さもなくば脇谷にも続投で8回からブルペンに任すかの、どちらかなのではないか。開幕からの連敗は、この継投に端を発している。

 もちろん、ここに書いたことはすべて結果論である。結果論など、何の意味もないと言われれば、それまで。反論はありません。

 ただ、たとえば、この2つのシーンの小さな違和感は、結果論とは別の話だ。

 カープは残念ながら、開幕は1分けを挟む4連敗のスタートになった。また去年までの二の舞か、と言いたくもなる。

 だが、それは違う。バリントンも前田健太も大竹寛も、予想通り好投した。打線も菊池や丸をはじめ、明らかに去年よりは打てる状態にある。

 まだまだ、あわてることはない。今年は勝てる……はずなのだ。ただ、小さな違和感が、どうも気になっている。

(このコーナーは二宮清純と交代で毎週木曜に更新します)
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