誰もが、ホッと胸をなでおろしたのではないだろうか。3日、WBC1次ラウンド中国戦での前田健太の投球である。
 
 まずは、本領であるコントロールが良かった。コーナーにビシッと決まっていた。とくにストレートが良かった。出そうと思えば、145キロは出せるという状態で、しかも捕手・阿部慎之助のミットにきれいに伸びていく。

 肩痛でマエケンがリタイアしたら、今年のカープはどうなるんだ、という不安はとりあえず一掃したと言っていい。

 WBCに関して言えば、あとはスライダーの精度だろう。当然ながら、武器であるスライダーは多投する。ただ、ストレートと違って、スライダーは、まだときおり甘く入ることがあった。一発長打を秘める外国人打線を相手にする場合、命取りになりかねない。

 いずれにせよ、2次ラウンドは中国よりは厳しい相手になる。強打者も多いだろう。無理をして、肩の不安が再発しなければいいが……。

 もちろん、日本代表のために好投してほしいけれども、急ピッチで調整してきたことも事実だろう。……いや、杞憂に終わることを祈ります。

 なかなか対外試合での登板がなかった野村祐輔も、5日の福岡ソフトバンク戦で3回無失点の好投をみせた。すでにブライアン・バリントンがオープン戦で2度登板したことを考えると、野村の調整は遅れ気味だったのだろう。しかし、これで開幕に合わせられることははっきりした。

 そしてバリントンの状態がいい。こんなに早くから調子をあげていいのだろうか、と余計な心配をしてしまうほどだ。2日の中日戦での大竹寛の投球も良かった。去年1年だけのカムバックではなく、今年もやってくれるのではないだろうか。

 つまり、前田健、野村、バリントン、大竹の4本柱が、どうやら揃いそうなのである。全員が10勝以上の力を持っている。全員15勝したら、それだけで60勝だ(というのは、あまりにもおめでたいですか)。

 そして、おそらく打線では、前回取り上げたフレッド・ルイスと菊池涼介が安定した成績を残すだろう。堂林翔太も、もう一皮むけるかもしれない。その兆しはある。

 それから、彼は三塁の守備が、かなり良くなっている。少なくとも、去年のようなみじめなエラーを連発することはあるまい。

 ということは、もしかして、もしかすると、優勝するのかな……、と大まじめに思う(笑うな!)。

 あとはベンチの問題と、必ず1度はマエケンを襲うであろうWBC疲れが、どの程度のダメージになるか。この2点にかかっている。

(このコーナーは二宮清純と交代で毎週木曜に更新します)
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