去年のキャンプでは、もちろん堂林翔太に注目が集まったわけだけれども、その陰で、実は菊池涼介の奮闘も印象に残った。菊地が夏場に、ポジションを奪える手前までいったのはご記憶の通りである。

 今年は、そういう隠れた逸材はいないのだろうか。と思っていたら、ドラフト2位入団の鈴木誠也(二松学舎大付)が、2日、新人では最初に1軍の練習に参加した(今季の新人は全員2軍スタート)のだという。しかも、野村謙二郎監督やコーチ陣が見守る中である。

 新井宏昌新打撃コーチのコメントは「物おじせず今ある姿を見せられるのはすごい」。そして、守備練習を見た石井琢朗内野守備走塁コーチのコメントは「内野の動きはできているし、楽しみ」(いずれも「デイリースポーツ」2月3日付)。

 ひねくれた言い方になるかもしれないが、今季のカープで期待するのが、何を隠そう、新井コーチと石井コーチである。

 新井コーチは、かつてオリックス時代のイチローを教えたことで有名だが、なにしろ理論派である。そして打撃技術について語るときの言葉が、明解である。

 カープの最大の課題は、いうまでもなく貧打の克服である。これについては、野村監督も去年までの打撃コーチ陣も、結果は出せなかったと言われても仕方あるまい。そこへ加入したのが新井コーチである。コーチひとりでそんなに変わるものか、と言われるかもしれないが、私は打線活性化のカギを握る男として注目したい。

 一方の石井コーチは、現役最後の数年を見る限り、若手に尊敬されていることはまちがいないだろう。現役時代の石井のプレーには、プロとしての誇りがにじみ出ていた。そういうものは、コーチとしての言動によって自然に若手に伝わっていくのではないだろうか。

 もちろん、高卒ルーキー鈴木が、あれよあれよという間に1軍に定着したりすると、また新たなスター誕生になる。新井、石井両コーチのコメントから推察するに、少なくとも可能性を秘めたルーキーであることに間違いあるまい。

 とはいえ、あわてることはない。じっくり2軍で鍛えて、夏場から秋に出てきてくれればいい。

 ただ、2人のコーチには、ぜひ、このような才能を見出して、うまく育成してほしいと願う。投手陣がそろった今だからこそ、この期待が現実になったときのカープは、強いはずである。

(このコーナーは二宮清純と交代で毎週木曜に更新します)
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