2軍で4番を張り続けている今季、和田恋はバッティングフォームの修正に取り組んでいる。高校時代からの左足を大きく上げるスタイルから、すり足に近いステップに変更した。
「(2軍の)岡崎郁監督からのアドバイスで、確率を上げるためにバッティングをシンプルにしようと変えました」
 三振が多い理由

 確実性のアップは19歳の若武者にとって、ひとつの課題である。8月30日現在、2軍での打率は.208。イースタンリーグで規定打席に到達しているバッターでは2番目に低い。三振99はリーグワーストだ。

「今はバットを振って、距離感を覚えることを第一にしています」
 和田のバッティングを見守る内田順三2軍打撃コーチは三振数の多さについて、こうフォローする。

「まだ若いから、変化球が来たから振らないのではなく、振って自分のタイミングと感覚をつかんでほしいんです。最初から真っすぐも変化球も対応するバッティングなんてできない。どんどん振っていく中で変化球をとらえる練習ができればいいんじゃないかな」

 本人も「とりあえず今はバットを振ることが大事」と三振数はさほど気にしていない。「結果も求められますが、ファームなんでいろいろ試せる部分もある。せっかく打席をいっぱいもらっているので、1打席1打席を大事にしたい」と、2軍での経験をレベルアップにつなげたい考えだ。

 内田コーチはヒットの確率を上げるために、「左ヒザでしっかり我慢する」ことを指摘する。
「足を上げずにブレをなくしたことで、バットの軌道は良くなってきています。ベルトより上に来た失投は確実に弾き返してヒットにしたり、ホームランにできている。今度は膝元に落ちたり、逃げたりする変化球の見極めです。低めのゾーンに対してヒザでしっかり我慢できるか。ヒザが開いてしまうと力のないスイングになってしまいます」

 ここまで2軍で本塁打は8本。当たれば飛ぶパンチ力はあるだけに、率が高まれば一層、怖いバッターになるはずだ。

 ルーキー岡本とのサード争い

「すぐにでも1軍に上がりたい気持ちはあります。でも、まだまだ力がない。来年には少しでも戦力になりたいですね」
 そう将来像を描く和田に対する首脳陣の期待値は高い。阿部慎之助や坂本勇人、レスリー・アンダーソンら1軍クラスのバッターが2軍戦に挑戦出場した際も4番を任された。この7月には1軍練習にも参加。将来の主力として順調にステップを踏んでいる。

「1軍はミスがない。確実なプレーで見ていて安心感がある。バッティングにしてもほとんど芯でとらえているんです。そこが大きな違いだと感じています」
 アマチュアとプロの差以上に、1軍と2軍の差は大きいとも言われる。プロ選手として着実に歩みつつある今、1軍とのレベル差をいかに縮めるかが次なる目標だ。

 選手層が厚い巨人には毎年、即戦力や有望株が次々と入団してくる。昨季、和田が主に守ったサードのポジションは今季、ドラフト1位ルーキーの岡本和真がメインで起用されている。和田はファースト、セカンドに回ることが多い。

 しかも、岡本は一足早く1軍昇格を果たし、東京ドームでの初打席や守備も体験している。和田も高卒2年目といって悠長に構えることはできない。
「今年は岡本が守っていますが、また来年は変わってくると思います。サードで出られれば一番ベストなので狙っていくつもりです」

 プロである以上、一歩も譲るつもりはない。岡本との同世代でのポジション争いは成長を促し、チームに活力をもたらせるはずだ。2軍の4番から、1軍で正真正銘の4番へ――。和田は自らの未来をしっかりと見据えて、ファームで一歩一歩、前進している。

(最終回へつづく)
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和田恋(わだ・れん)プロフィール>
 1995年9月26日、高知県土佐郡土佐町出身。父と兄の影響で野球を始め、小学時代は軟式野球の嶺北ジュニアに所属。高知中ではショート兼ピッチャー。高知高では1年夏からレギュラーに。サード兼ピッチャーで2年春、3年春と甲子園に出場。3年時はベスト4に進出し、準決勝で済美高の安樂智大(現東北楽天)からホームランを放つ。高校時代は通算55本塁打。13年のドラフト会議で巨人から2位指名を受けて入団。将来の中軸として期待され、1年目の昨季は2軍で78試合に出場し、打率.200、1本塁打、15打点。今季は開幕から2軍の4番を務める。サードに加え、ショート、セカンド、ファーストと内野ならどこでも守る。180センチ、84キロ。右投右打。背番号61。




(文・写真:石田洋之)


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