22日、第15回世界陸上競技選手権が中国・北京で開幕した。男子マラソンは永定門から国家体育場までの42.195キロで行われ、ギルメイ・ゲブレスラシエ(エリトリア)が2時間12分28秒で優勝した。ゲブレスラシエはエリトリア初の金メダル獲得となった。日本人トップは藤原正和(Honda)が2時間21分6秒で21位。前田和浩(九電工)は2時間32分48秒で40位だった。同種目の日本勢は9大会ぶりに入賞ゼロとなった。注目の男子100メートル予選ではウサイン・ボルト(ジャマイカ)、ジャスティン・ガトリン(米国)ら有力選手が順当に準決勝へ進出した。高瀬慧(富士通)は10秒15で全体25位。予選通過はならなかった。
 一番に鳥の巣スタジアム(北京国家体育場の愛称)へと入ってきたのは意外な男だった。近年、長距離界を席巻してきたエチオピア、ケニア、ウガンダ勢ではなかった。アフリカの小国エリトリアの19歳・ゲブレスラシエが、今大会初の金メダリストととなった。

 39カ国68人がエントリーした男子マラソン。北京城前の永定門をスタートし、石畳を駆け抜けた。ロンドン五輪金メダリストで、前回モスクワ大会を制しているステファン・キプロティチ(ウガンダ)、昨年9月に2時間2分57秒の世界記録をマークしたデニス・キプルト・キメット(ケニア)、前世界記録保持者のウィルソン・キプサング(ケニア)という顔ぶれが優勝争いをリードすると思われた。

 しかし、5キロを16分6秒のスローペースで入ったレースは、中盤までルゲーロ・ペルティレ、ダニエレ・メウッチのイタリア勢が引っ張った。日本勢の藤原、前田も徐々に遅れはじめ、トップ集団からは離された。日本人トップで入賞以上の成績を収めれば、来年のリオデジャネイロ五輪の出場切符も獲得できたが、力の差を見せつけられた。

 優勝候補のエチオピア、ウガンダ、ケニア勢はなかなか主導権を握れない。30キロ地点を前にして飛び出したのは、レソトのチェポ・ラモネネ。自己ベストも2時間16分21秒という伏兵が、30キロを過ぎると独走状態に入る。

 このままラモネネが番狂わせを演じるかと思われたが、主役はこの男ではなかった。ラモネネは35キロ付近の給水地点でスペシャルドリンクを探し、立ち止まるハプニング。ここでペースを狂わされ、後続に迫られる。35.5キロ過ぎで、そのラモネネを最初にとらえたのがゲブレスラシエだった。

 3度目のフルマラソンと経験は浅いが、ゲブレスラシエは先頭に立つと、その後は安定した走りを見せる。一度はイエマネ・ツェゲイ(エチオピア)に並ばれるも、40キロ過ぎにスパートをかけ、独走。鳥の巣スタジアムに入ると、観客席から国旗を受け取り、トラックを疾走。そのまま逃げ切った。

 北海道と九州を合わせたぐらいの国土面積のエリトリア。1993年にエチオピアから独立した小国の19歳が快挙を成し遂げた。同国に世界選手権初の金メダルをもたらした。

 主な結果は以下の通り。

【男子マラソン】
1位 ギルメイ・ゲブレスラシエ(エリトリア) 2時間12分28秒
2位 イエマネ・ツェゲイ(エチオピア) 2時間13分8秒
3位 ムニョ・ソロモン・ムタイ(ウガンダ) 2時間13分30秒
21位 藤原正和(Honda) 2時間21分6秒
40位 前田和浩(九電工) 2時間32秒49秒

(文/杉浦泰介)