「K-1 WORLD GP2010 FINAL」が11日、東京・有明コロシアムで開催され、優勝候補のアリスター・オーフレイム(オランダ/ゴールデン・グローリー)が、決勝でベテランのピーター・アーツ(オランダ/チーム・アーツ)を下し、初の頂点に立った。現在、オーフレイムは「Strike Force」のヘビー級王者で、今回の優勝により、総合格闘技とK-1の両方で最強の称号を得た。アーツは準決勝で連覇を狙ったセーム・シュルト(オランダ/正道会館)を激闘の末に下したが、決勝では力尽き、12年ぶりのGP制覇はならなかった。日本勢で唯一、コマを進めた京太郎(チームドラゴン)はシュルトに準々決勝で敗れた。
(写真:決勝でアーツに強烈なフックを浴びせるオーフレイム)
「MMA(総合格闘技)のチャンピオンがK-1のチャンピオンになるのはありえなかった。そして自分が達成できたことがうれしい」
 最後に笑ったのは総合格闘技のリングからやってきた“侵略者”だった。このグランプリに参戦して2年目。バダ・ハリ(モロッコ/ショータイム)やレミー・ボンヤスキー(オランダ/チームボンヤスキー)が不在の中、大本命と目された男が圧倒的な強さをみせた。

 初戦こそタイロン・スポーン(スリナム/ブラックレーベルファイティング) の左ストレートを被弾し、守勢に回るシーンもあったが、これも本人曰く「トーナメントなので、その後の試合のためにセーブしていた」ため。最終3Rに左右の連打でダウンを奪って、判定で逆転勝ちを収めると、準決勝で激突したグーガン・サキ(トルコ/チームレベル)に対しては左ミドルキックで相手のヒジを破壊した。

 大きなダメージもなく、決勝へ勝ち上がったオーフレイムに対し、激闘の末にFINALへとたどり着いたのがピーター・アーツだ。10月に40歳を迎え、今大会限りでのグランプリ引退も囁かれたベテランが会場を大いに盛り上げる。準決勝で対戦したのは連覇と史上最多となる5度目の優勝を目指すセーム・シュルト。身長212センチ、体重133キロを誇る絶対王者相手に堂々の打ち合いを演じた。2Rには相手の右を顔面に受けて右目の下をカットするもひるまない。逆にキックでシュルツの出足を止め、パンチで追い詰めた。

 3Rには、その圧力にたまらず、シュルツがクリンチに逃れる場面が増え、形勢は逆転。棒立ちになった相手を左右の連打でダウン寸前まで追い込み、場内には歓声がこだました。
「自分も疲労困憊だったが、相手も疲れていると思った。最後まで頑張れば勝てる」
 93年の第1回大会から参戦しているK-1の“生ける伝説”がまた新たなレジェンドを打ち立てた瞬間だった。

 ただ、アーツに決勝を闘い切るだけの余力は残っていなかった。オーフレイムの猛攻にコーナーへ追い詰められると、ヒザ蹴りから左右のフックがヒットし、レフェリーがスタンディングダウンを宣告。その後、ヨロヨロとリングにひざまづくと、もう立ち上がれなかった。
「FINALに向かう前から体力が欠如していた。アリスターを負かすのは難しかった」
 精魂尽き果てたといった表情で試合を振り返ったアーツだが、そのファイトには勝ったオーフレイムからも「尊敬できる真実のチャンピオン。世の中に存在するあらゆるスポーツのチャンピオンの中のチャンピオン」と最大限の賛辞を送られていた。
(写真:「これからお寿司を食べに行きたい」と喜ぶオーフレイム)

 新王者の次戦は大晦日の「Dynamite!!」が確実。石井慧(アイダッシュ)との対決を期待する声もあるが、本人は「DREAMのチャンピオンとやりたい」と希望を明かした。2011年は前半がStrike Force、後半はK-1で最強の称号を不動のものとする1年となる。

 各試合の結果は以下の通り。

<オープニングファイト> 
〇高萩ツトム(チームドラゴン)
3R判定 3−0
×木村秀和(P.O.D./team pitbull)

<第1試合> ※WORLD GP リザーブファイト
〇エヴェルトン・テイシェイラ(ブラジル/極真会館)
3R判定 3−0
×エロール・ジマーマン(キュラソー島/ゴールデングローリージム)

<第2試合> ※WORLD GP 準々決勝
〇ピーター・アーツ(オランダ/チーム・アーツ)
1R2分20秒 KO
×マイティ・モー(米国/フリー)

<第3試合> ※WORLD GP 準々決勝
〇セーム・シュルト(オランダ/正道会館)
3R判定 3−0
×京太郎(チームドラゴン)

<第4試合> ※WORLD GP 準々決勝
〇グーガン・サキ(トルコ/チームレベル)
3R判定 ドロー 延長1R 3−0
×ダニエル・ギタ(ルーマニア/Kamakura Gym)

<第5試合> ※WORLD GP 準々決勝
〇アリスター・オーフレイム(オランダ/ゴールデングローリージム)
3R判定 3−0
×タイロン・スポーン(スリナム/ブラックレーベルファイティング)

<第6試合> ※スーパーファイト
〇ヘスディ・カスケス(エジプト/パンクレイション/チャクリキ)
1R1分41秒 KO
×藤本祐介(MONSTER FACTORY)

<第7試合> ※WORLD GP 準決勝
〇ピーター・アーツ
3R判定 2−0
×セーム・シュルト

<第8試合> ※WORLD GP 準決勝
〇アリスター・オーフレイム
1R2分33秒 KO
×グーカン・サキ

<第9試合> ※スーパーファイト
〇シング“心”ジャディブ(インド/パワーオブドリーム)
1R2分58秒 KO
×セルゲイ・ハリトーノフ(ロシア/ゴールデングローリージム)
(写真:カウンター攻撃でダウンを奪ったシング)

<第10試合> ※WORLD GP 決勝
〇アリスター・オーフレイム
1R1分7秒 KO
×ピーター・アーツ