7日、アジアサッカーの王者を決めるアジアカップ2011がカタールで開幕する。グループBに入った日本はサウジアラビア、ヨルダン、シリアとグループリーグを戦う。アルベルト・ザッケローニ監督が初めて公式戦で采配を揮う国際大会で、日本はアジア最多となる4度目の優勝を果たすことができるのか。永遠のライバル・韓国や地の利を活かしたい中東勢も頂点を狙っている。2022年W杯の開催地にもなるカタールで、どのような戦いが待っているのか。
 4年に一度の開催となるアジアカップが1月7日から29日の間で行われる。ここ2大会は7月に行われてきた同大会だが、開催国の気候を踏まえて1月開催となった。このためワールドカップイヤーが明けてすぐの開催となり、W杯に出場した4カ国の代表選手にとっては辛い日程となっている。

 ザックの選択は「4」か「3」か?

 日本代表にとってこの大会はどのような位置づけとなるのだろうか。昨年9月に日本代表監督に就任したアルベルト・ザッケローニにとって初の公式戦となる。就任会見ではアジアカップの目標を次回大会(2015年オーストラリア)の予選免除となる3位以内と定めていたが、年末から行なわれている代表合宿では「目標は優勝」とミーティング内で上方修正を行っている。監督自身がアジアの頂点を目指せるだけの手応えを感じているのだろう。

 ワールドカップ翌年の国際大会だけに、結果にこだわる必要はない。ノルマを考えるのはサッカー協会幹部だけでいい。ここではザックジャパンがどのようなサッカーを目指すべきか考えてみたい。

 ザッケローニが就任した直後、セリエAのウディネーゼ、ACミランで結果を残した「3−4−3」が彼の代名詞であると多くのマスコミが報じた。しかし、10月に行われたアルゼンチン戦、韓国戦でザックが採用したのは「4−2−3−1」。南アフリカW杯直前まで岡田武史前監督が採用した布陣をベースに新しいチームを始動させた。あれから3カ月経った今、日本にあったシステムとしてザックはどの布陣を採用するのか。

 今回、選考された顔ぶれをみると、不安な部分はやはりDFラインだ。ワールドカップでセンターバックに入った中澤佑二(横浜FM)、田中マルクス闘莉王(名古屋)を欠く上、10月の親善試合で活躍した栗原勇蔵(横浜FM)もケガで欠場。核となるべき3名を欠いた守備陣がどのような守りをみせるのか。

 リーダーとなるのは今野泰幸(F東京)。4バックでも3バックでも彼を中心にDFラインが構築されるのは間違いない。冷静な判断でラインを統率する力に期待がかかる。問題はそれに続く選手だ。オランダで腕を磨く吉田麻也(VVVフェンロ)、ドイツ移籍が決定するなど波に乗っている槙野智章(ケルン)、天皇杯決勝でも安定した守備をみせた伊野波雅彦(鹿島)がレギュラー候補。センターバックが手薄ということを考えれば4バックを採用し、オーソドックスな戦いを見せるのが定石だろう。

 ただし、槙野、吉田、伊野波のうち2人が起用できるメドが立てばザックは3バックを試すことになるかもしれない。負けられない戦いとなるのは決勝トーナメントに入ってから。グループリーグでは目先の勝敗に拘る必要はない。初戦のヨルダン戦では慣れ親しんだ4バックで試合に臨み、第2戦のシリア戦では3バックを試運転してみる価値もありそうだ。最終戦のサウジアラビアとの試合はタフな展開が予想されるだけに、出だしの2試合をザックジャパンの方向性を探るゲームとし、サウジ戦から勝敗と内容を重視した戦いをみせてほしい。

 W杯で悔しい想いを味わった前田、香川のゴールに期待

 南アフリカW杯では“急造1トップ”でグループリーグを突破した日本。今回はセンターフォワードの位置に前田遼一(磐田)が起用されるだろう。これまで代表戦では7試合で2ゴール。昨年のワールドカップでは直前でメンバーから漏れ悔しい想いを味わっている。その悔しさをバネに09シーズンに続き2年連続で得点王の座に就いた。両サイドバックから精度の高いクロスが供給されれば多くのチャンスが生まれる。そこで前田の嗅覚が発揮されれば、FW争いのライバルに差をつけるだけでなく、日本の躍進に貢献できるはず。Jリーグで実績を残しながら、代表では不運な結果に終わってきたイメージの強い前田。新監督へのアピールに成功すれば、エースの座も見えてくる。

 攻撃の選手ではドイツ・ブンデスリーガで活躍中の香川真司(ドルトムント)とワールドカップ後にすっかり代表の顔となった本田圭佑(CSKAモスクワ)の共演がみどころといえる。ともにゴールへの意識が強く、海外でもしっかりと結果を残している。特に香川のリーグ戦17試合8ゴールは掛け値なしの立派な成績だ。南アフリカではベンチ入りすらも叶わなかったことを考えると、ここ1年での伸び幅はすさまじいものがある。ブンデスリーガで揉まれた経験がザックジャパンに好成績をもたらすに違いない。さらに本田もクラブのポジションよりも前でプレーすることになりそうだ。W杯で見せた無回転のフリーキックも相手に脅威を与える。ポジションの近い香川の活躍も刺激になっているはず。欧州組の先輩として意地を見せてほしい。

 韓国、豪州、そして中東勢がライバル

 日本のライバルに目をやると、やはりワールドカップ出場組が気にかかるところ。中でも韓国はパク・チソン(マンチェスター・ユナイテッド)、キ・ソンヨン(セルティック)、イ・チョンヨン(ボルトン)などワールドカップでも主役を張った欧州組が名を連ねている。ワールドカップ出場8回を誇りアジアでの確固たる地位を築いている韓国も、アジアカップでは1960年大会を最後に優勝していない。51年ぶりの頂点を目指すモチベーションは低くない。準々決勝で日本と激突する可能性はないものの、オーストラリアと同居するグループCに入っており、グループ2位通過もあり得る。次回大会の予選免除となる3位以上を懸けた準決勝以降で日本との争いになれば激しい試合となるだろう。

 オーストラリアもアジア連盟に籍を移して2回目の大会となり、大会初制覇に向け準備万端だ。守護神マーク・シュウォーツァー(フルアム)を中心とした守備陣は強固であると同時に、指揮官ホルガー・オジェックの存在も怖い。日本を熟知しているだけに直接対決ではザックジャパンの要所をしっかりと抑えてくるはずだ。

 今大会で忘れていけないのは中東勢だ。アジアカップの歴史を紐解くと、これまで14回行われている大会で実に9回が中東勢の優勝(残り5大会のうち日本が3回、韓国が2回)。さらに中東で開催された8回の大会で、7回の優勝を果たしている(残り1大会は2000年レバノン大会での日本の優勝。準優勝はサウジアラビア)。これらのデータを見ても、W杯出場組の東アジア勢、オーストラリアが優位とは言い切れない。

 中でも注目は地元開催となるカタールだ。オイルマネーを背景に強化を図る同国は南アフリカW杯最終予選、アウェーでの日本戦で1対1のドローに持ち込むなど3年目に突入したブルーノ・メツ体制で力をつけている。ホームの声援を借りれば上位進出も可能だ。12年後のW杯開催のためにもブザマな試合はできない。

 前回優勝のイラクや日本と並ぶ最多優勝3回を誇るイラン、さらには日本と同組のサウジアラビアも波に乗れば脅威だ。予選免除となる3位をかける戦いは彼らの出来によっては厳しいものになることも考えられる。過去2大会の非中東圏のような大会は期待できない。ワールドカップがやってくる気運が中東勢の背中を押せば、東アジア勢にとって難しい展開になるのではないか。

(大山暁生)

※アジアカップ開催中は、現地カタールで取材を行っている二宮寿朗氏による 「ドバイ日記」をお送りいたします。日本代表戦の観戦記や大会期間中のカタールの様子などをレポートする予定です。どうぞお楽しみに!

【アジアカップ2011カタール試合日程】
●グループリーグ 2011年1月7日(金)〜29日(土)
☆日本代表戦
1月9日(祝・月)ヨルダン戦(日本時間22:15、現地時間16:15)
1月13日(木)  シリア戦(日本時間翌1:15、現地時間19:15)
1月17日(月)  サウジアラビア戦(日本時間22:15、現地時間16:15)

●決勝トーナメント
<準々決勝>   1月21日(金)・22日(土)
<準決勝>    1月25日(火)
<3位決定戦>  1月28日(金)
<決 勝>    1月29日(土)