ボクシングのWBA世界バンタム級タイトルマッチが7日、大阪府立体育会館で行われ、王者の亀田興毅(亀田)が同級14位のダニエル・ディアス(ニカラグア)を11R終了TKOで下し、初防衛に成功した。亀田はここまで5試合の世界戦を経験し、日本人初の3階級制覇を達成しているが、KO勝利は初めて。この日の亀田は長身の相手に対し、左ボディでダメージを与えると、8Rには左フックでダウンを奪う。以降はほぼ一方的に攻め立て、レフェリーが11R終了時に試合続行不可能と判断した。
 試合前のKO宣言どおりの快勝だった。だが、決して楽勝ではなかった。挑戦者は身長で8センチ、リーチで、リーチ9センチ上回った。懐に入らなければパンチは打てないが、安易に距離を詰めれば相手の腕が伸びてくる。

 立ち上がりの亀田は、ディアスに対してうまく対処していた。スピードのない挑戦者に、フェイントをかけながら内に入り、左を当てる。右に回るとみせかけて左のパンチを繰り出すなど、よく考えたボクシングを見せていた。長身だけにボディ攻撃も効果的で相手は嫌がっていた。

 だが、序盤で完全にペースをつかんだことで、亀田は力んでしまった。一撃で倒そうとするあまり、足の動きが少なくなり、パンチも顔を狙いすぎた。となれば、ディアスにも反撃の余地が出てくる。長い腕から右アッパー、右フックが飛び出し、手こずった。

 それでも「力んでも倒すのがテーマだった」と語るように、ラウンドを重ねるにつれ、再びリズムを取り戻した。相手の打ち終わりを狙って、カウンターの左を返し、のけぞらせる。左ストレートに左ボディとうまくパンチを散らし、有効打が増えてきた。

 そして8R、距離を詰め、相手が頭を下げたところへタイミングのよい左フック。バランスを崩していた相手は尻もちをついた。ディアスはすぐに立ち上がったものの、これで大勢は決した。

 9Rになるとボディが効いてきたのか、明らかに挑戦者の動きが止まる。ディアスはローブローを主張したが認められず、亀田の連打にマウスピースを吐き出してしまう。10R以降は、消耗の度合いはより激しくなり、立っているのがやっとの状態。亀田は追い討ちをかけるようにボディを何度も打ち込み、ラッシュをかけた。

 欲を言えば、ゴングが鳴る前に、もう一度、相手をキャンバスに沈めたかったところか。だが、ビッグマウスとは裏腹に、ファンを沸かせる場面に乏しかった過去の世界戦とは違い、有言実行で挑戦者を退けた。3階級を制覇し、「ここからが亀田興毅の第2章」と位置づけた一戦。その幕開けはまずまずと言っていいだろう。