第92回東京箱根間往復大学駅伝競走は3日、復路5区間(109.6キロ)で行われた。往路を連覇した青山学院大学が復路でも他校を圧倒。1区で先頭に立って以降、最後まで影を踏ませずぶっち切った。合計タイムは10時間53分25秒で2連続の総合優勝を達成した。2位に東洋大学が7分11秒差で入り、駒澤大学は10分35秒差の3位だった。大会のMVPにあたる金栗四三杯には往路の1区区間賞の久保田和真(4年)が選ばれた。

 

 上位10校までに与えられる来年のシード権は、早稲田大学、東海大学、中央学院大学、日本体育大学、山梨学院大学、順天堂大学、帝京大学が獲得。往路14位の中央学院大、同13位の日体大は復路で逆転し、シード権に滑り込んだ。

 

 フレッシュグリーンの風が今年も箱根路に吹いた。青学大は初の総合優勝から1年が経ち、大本命として臨んだ中で連覇を成し遂げた。

 

「彼がしっかり下ってくれれば……」。前日のレース後、青学大・原晋監督のコメントを聞くかぎり、3分4秒のリードをどれだけ守れるか。復路のスタート、山下りの6区の出来が優勝争いの焦点だった。6区を任された小野田勇次(1年)は軽快なピッチから昨年の三浦雅裕(当時3年)の区間記録を上回るペースで駆け下りた。5キロ通過時点では、2位の東洋大の口町亮(3年)に詰められたが、先輩たちがつくってくれたリードのおかげで背中に追い上げの影を感じることはなかった。単独走で快調に進む。10キロ通過では逆にその差を10秒以上広げた。

 

 小野田はそのままペースを緩めることなく、区間記録タイとなる58分31秒の好タイムで小椋裕介(4年)に襷を繋いだ。区間賞こそ、58分9秒の区間新記録をマークした日体大の秋山清仁(3年)に奪われたが、区間2位の好走。青学大の原監督は「1年生の小野田が120%の出来で本当に素晴らしい快走でした。あそこで優勝を確信することができた」とルーキーの活躍を称えた。

 

 2位との差は4分15秒と開き、ほぼ盤石となった青学大のV2ロード。小椋は4年連続の7区を走る。「僕の箱根駅伝は小田原から平塚までしかなかった」。勝手知ったる21.3キロは、途中日差しを浴び、急激な温度差から体力を奪われるハードな区間である。1年時は区間14位、2年時は2位、3年時は区間賞と順調に成績を上げてきた。原監督からも信頼の厚い区間だ。10キロ通過は29分14秒と快調に走り、2位東洋大の追撃を許さない。

 

 小椋は徐々に表情も険しくなってきたが、走りそのものは崩れなかった。下りの場面でペースを作り直しながら、持ち直して走り抜いた。「みんながいい走りをした。小野田があそこまで頑張ってくれるとは思っていなかった。僕も“負けてられない”と区間新を狙いました」。久保田、一色恭志(3年)、神野大地(4年)と並ぶ四天王と呼ばれる小椋が意地の走りを見せた。区間新はならなかったが、1時間3分8秒で区間賞を獲得した。2位との差はさらに38秒広げた。

 

 平塚中継所で小椋から襷を受け取った下田裕太(2年)は初の箱根駅伝。往路4区で2年連続区間賞を獲得した田村和希(2年)ら同学年と切磋琢磨しながら先輩の背中を追いかけてきた。次代のエース候補は出だしから攻めの走り。チームの好走が下田の背中を押していた。「最初でリズムを作りたかった。往路も突っ込んで走っていても持っていたので、同じ調整できていたので大丈夫だと思った」。10キロは29分29秒で通過した。

 

 下田は強気な走りだけなくクレバーな部分も覗かせる。徐々に気温も上がっていく中で、狙いを冷静に切り替える。「区間記録を狙っていたのですが、気温も高くなっていたので区間2位とどれだけ離せるかが勝負だと思いました」と下田。同学年の中村祐紀の待つ戸塚中継所へ襷を届けた。下田は歴代3位の1時間4分21秒をマークし、区間賞を獲得した。リードは7分以上と大きく広がった。殊勲の下田はゴール後にテレビカメラにピースサインを送る余裕も見せた。

 

 9区の中村は東洋大に差を縮められたものの、アンカーを務めた渡邉利典(4年)が東京・大手町へと襷を運ぶ。「絶対繋いでやらないと。僕が終わらせるわけにはいかない」と最上級生として安定したペースを刻みゴールを目指した。連覇への道をひた走る渡邉。10キロ、20キロと通過しても表情も変わらず淡々と歩みを進めていった。読売新聞社前のフィニッシュ地点で渡邉を待つ部員たちからは「利典」コールが送られる。最後の直線に入り、渡邉はそれに応えるように右拳を掲げた。誰より早くゴールテープを切り、1時間10分7秒の区間賞で締めた。

 

 青学大は昨年の記録には及ばなかったものの、10時間53分25秒で連覇を達成した。箱根駅伝を初優勝し、今シーズンは3冠を目指していた。2冠目となる全日本大学駅伝対校選手権大会では東洋大に敗れ、2位だった。「あの負けがチームの成長につなげることができた」と原監督はチームの闘志に火をつけた負けを振り返る。周囲からも大本命に見られ、自分たちも狙いにいった今回の箱根駅伝。終わってみれば、1区途中から一度も先頭を譲らなかった。全10区間中6区間での区間賞獲得の圧勝劇。神野、久保田らは卒業するが、一色をはじめとした7人の箱根経験者が残る。来シーズンも青学大が学生駅伝をリードする。

 

 総合成績は以下の通り。

(1)青山学院大(2)東洋大(3)駒澤大(4)早稲田大(5)東海大(6)順天堂大(7)日本体育大(8)山梨学院大(9)中央学院大(10)帝京大(※)関東学生連合(11)日大(12)神奈川大、城西大(14)明治大(15)中央大(16)拓殖大(17)東京国際大(18)大東文化大(19)法政大(20)上武大

※OP参加のため順位なし

 

(文/杉浦泰介)