この1年で関係者30人が起訴され、会長と副会長の2人が処分を受ければ、これはもう立派な反社会的勢力である。汚職の底無し沼と化したFIFAの再建は容易ではない。

 

 2月にチューリヒで開かれる臨時総会に向け、独立機関の改革委員会がまとめた提言を理事会が承認したのは昨年12月のことだ。

 

 読めば読むほど、この組織が本気でウミを出し切り、信頼回復に務めたいと真摯に考えているのか疑わしくなってくる。弥縫策もいいところである。

 

 まずは「最長3期12年」に制限される会長と理事の任期。権力の腐敗を防ぐには「2期8年」は譲れない線だろう。12年も権力の中枢にいれば、誰だって感覚がマヒする。腐敗と暴走の制度的防波堤を設える上で、12年という時間は適切とは言えない。IOC会長も最大で12年の任期が与えられているが、改革の進んだ組織と同列に論じることはできない。

 

 一連のFIFAの構造汚職はジョアン・アベランジェ前会長時代の24年に及ぶ独裁に端を発する。98年6月、アベランジェの支持基盤をそのまま受け継ぐかたちで第8代会長に就任したゼップ・ブラッターは、前任者の金権体質をも踏襲した。「FIFAはビジネスの場だ。水泳や釣りクラブではない」とは言いも言ったりだ。

 

 ブラッターはアベランジェが推進した途上国への援助を、さらに加速させた。それが99年にスタートした「ゴール・プログラム」である。原資はFIFAへの総収入1386億円(13年度)のおよそ45%を占める放映権料だ。

 

 サッカー版ODAともいえるこの制度が慈雨となり、途上国のサッカー環境の改善につなげた点は評価に値する。問題はカネで票を買い、施設建造に際しては、口ききをはびこらせるなど、FIFAを“開発独裁”色の強い組織に染め上げたことだ。功と罪を量りにかければ、後者に目盛りが傾くのは自明である。

 

 一部のメディアによると、提言の中には「事務総長の権限強化」という項目も含まれているという。理事に集中する権限を分散するための措置だというが、ブラッターはアベランジェ政権下で17年も事務総長を務め、実務を取り仕切ることで、力を蓄えていった。彼の“権力への道”を検証すれば、これは乗れない案である。むしろ事務総長にも任期のタガをはめるくらいの用心深さが求められる。

 

<この原稿は16年1月20日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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