ボクシングのWBC世界バンタム級王座決定戦と世界スーパーフェザー級タイトルマッチが6日、国立代々木競技場第2体育館で行われ、バンタム級では同級2位の山中慎介(帝拳)が同級1位のクリスチャン・エスキベル(メキシコ)を11R1分28秒TKOで下し、世界初挑戦で新王者に就いた。山中は9連続KO勝利で、無敗のまま王座を獲得した。またスーパーフェザー級では王者の粟生隆寛(帝拳)が、同級8位の挑戦者デビス・ボスキエロ(イタリア)を2−1の判定で辛くも下し、2度目の防衛に成功した。これで日本人の現役世界王者は史上最多の8人に増えた。
<山中、得意の左が炸裂>

 新しいチャンピオンにふさわしい戦いぶりだった。
 序盤から得意の左がヒットした。2Rには左ストレート、3Rには左ボディがメキシコ人をとらえる。強打の相手も右を振り回して前に出てくるが、ガードをしっかり固め、クリーンヒットを許さない。4R終了時の公開採点ではいずれも山中が2ポイントのリードをつけた。

 5Rも左を当ててエスキベルをぐらつかせると、ついに6R、ダウンシーンが訪れる。終了間際、左のカウンターが炸裂。顔面をとらえると相手は崩れ落ちた。ここはラウンド終了のゴングに救われたが、完全に山中がペースをつかむ。

 7Rも攻めてくるエスキベルに左を合わせ、ロープ際に後退させる。いつ仕留めてもおかしく雰囲気だったが、相手も実力者だ。さらに攻勢を仕掛ける山中に対して、カウンターの右ストレートがヒット。ヒザをついてダウンを奪われてしまう。

 ただ、これは大きなダメージにはならなかった。8Rも左でエスキベルをぐらつかせ、相手の右目は大きく腫れてくる。8R終了時に大きくポイントでリードした山中は相手の動きを見極め、次々とパンチを当てていく。

 11R開始前には会場のブレーカーが落ちて、リングが暗転するハプニングもあったが、大勢には影響なかった。5分ほどの中断を経て、試合が再開すると山中の左が再び顔面をとらえる。これにはたまらずエスキベルが顔を押さえてしゃがみこむ。これで勝負あり。山中が一気に攻め立てると、メキシコ人は再びロープ際に座り込み、レフェリーが試合を止めた。

 ノニト・ドネア(フィリピン)の王座返上で2日前に急遽、世界戦に昇格した試合だった。ウィラポン・ナコンルアンプロモーション(タイ)、長谷川穂積、フェルナンド・モンティエル(メキシコ)……“黄金のバンタム”と呼ばれ、近年も実力者が巻いてきたベルト。千載一隅のチャンスを29歳は得意の左でがっちりとつかんだ。

<粟生、笑顔なき防衛>

「何もないです」
 勝利後のリング上、粟生は吐き捨てるように言った。「誰もが納得する形で勝ちたい」と意気込んでいた試合だが、最後まで見せ場はつくれなかった。

 どんどん距離を詰めてくる相手をさばききれなかった。粟生は左ボディで動きを止めようと試みるが、単発で連打が出ない。ゴングが鳴った後、首をかしげる場面もみられ、4R終了後の公開採点では1者が王者を支持したものの、1者は挑戦者がリード、もう1者はドローだった。

 まさかの展開に粟生は中盤以降、ボディを集め、相手のスタミナを奪いにかかる。だが、距離が詰まるとクリンチになり、有効打を奪えない。8R終了時の採点ではは3者とも粟生がリードしていたものの、1者が2ポイント差、1者が1ポイント差と際どい勝負になった。

 劣勢の挑戦者は終盤も前に出てくる。王者はカウンターを合わせたいところだが、なかなかヒットしない。むしろ相手のジャブを受け、手数が減ってしまう。距離を詰めてくる相手にクリンチで逃れる場面も目立った。

 最終12Rはお互いに消耗し、もつれ合う状態で試合が終了。
「(相手は)すごい研究をしていた。サウスポー対策、僕の対策をしっかりしていた」
 ラスト4Rは挑戦者有利とみるジャッジも多く、苦戦の末の防衛だった。