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(写真:ポーズをとる国内招待選手<左から今井、藤原、松村、村山>)

 26日、「東京マラソン2016」のプレスカンファレンスが都内で行われ、日本歴代6位の記録(2時間7分39秒)を持つ今井正人(トヨタ自動車九州)、同8位(2時間7分48秒)の藤原新(ミキハウス)、世界歴代2位(2時間3分13秒)のエマニュエル・ムタイ(ケニア)、ロンドン五輪金メダリストのスティーブン・キプロティチ(ウガンダ)ら国内外の招待選手が出席した。昨年の大会で自己ベストをマークし、日本人トップ(7位)に入った今井は「自分自身はチャレンジャー。海外勢にチャレンジしていきたい」と意気込んだ。

 

「世界に出て行くための大会であり、そこで戦うための大会でもある」

 東京マラソン財団の早野忠昭レースディレクター(RD)は、第10回と節目を迎えた東京マラソンをこう評した。最高峰シリーズのワールドマラソンメジャーズ(WMM)に加入して4年目。今大会からは男女車いす部門が国際パラリンピック委員会(IOC)の公認となり、リオデジャネイロパラリンピック日本代表選考レースにもなっている。

 

「東京マラソンの歴史上、これだけの国内外の選手を集められたことを光栄に思う」と胸を張る早野RD。男子はムタイ、キプロティチのほかに大会記録を持つディクソン・チュンバ(ケニア)、ロンドン五輪銀メダリストのアベル・キルイ(ケニア)ら強力なアフリカ勢が参戦する。ペース設定は1キロ3分を切り、ハーフで1時間2分30秒から3分を予定しているという。

 

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(写真:「自分の力を出し切り、42.195キロで使い果たす」と完全燃焼を誓う今井)

 リオ五輪の日本代表選考を兼ねている男子の部。日本勢は今井、藤原、松村康平(三菱日立パワーシステムズ長崎)がリベンジに燃える。昨年の東京マラソンで藤原は37位、松村は25位に終わり、世界選手権北京大会の出場権を獲得できなかった。今井は日本人トップで北京行きの切符を手にしたものの、直前に髄膜炎にかかり欠場を余儀なくされた。エースとして期待されながら、スタートラインにも立てなかった。

 

「1カ月はほとんど走らなかった」という今井。復帰に向けて、最初の頃はジョギング程度で全身筋肉痛になった。9月10月は体調を上げることに集中し、秋までは慎重に調整を続けてきた。1月のニューイヤー駅伝で区間2位の走りを見せ、復調をアピールした。今井は着実に段階を上げて、ここまで歩みを進めてきた。周囲からはどうしても1年前の走りを期待されるが、本人は「昨年の自分とは比べずにやってきた」と後ろは振り返らない。今井は陸上を始めた時から、世界と戦うことを目標にしてきた。東京を抜けられれば、その道はリオへと続くはずだ。

 

 箱根を沸かせた若きランナーたちが、今年も東京マラソンに挑む。箱根駅伝連覇の青山学院大学からは一色恭志、下田裕太らが、2年連続3位の東洋大からはエース服部勇馬がマラソンデビューを果たす。服部は昨年もエントリーしたものの、ケガで出場を辞退した経緯がある。鉄紺のエースにとって、1年越しの初マラソンだ。学生生活の集大成を飾れるか。

 

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(写真:自己ベスト2時間5分を切るアフリカ勢がレースを引っ張ると予想される)

「緊張よりもワクワクしている」。こう語るのは、社会人1年目で今大会が初マラソンとなる村山謙太(旭化成)だ。名門・駒澤大学でエースとして活躍したホープである。14年世界ハーフマラソン選手権は56位、15年世界選手権では男子1万メートルで22位だった。世界の壁は厚かった。それでも村山は「この大会に合わせてきた。自信はある」と強気の発言を残した。「ここで結果を出したら、今後につながる。絶好のチャンス」。恐いもの知らずの勢いで、そのままリオ行きの切符を掴み取りに行く。

 

 エリートマラソン、市民マラソンとしても注目度は年々、上がってきている東京マラソン。それは延べ144の国(26日現在の予定)と地域で中継することからもうかがい知れる。世界から視線を注がれるレースで、スポットライトを浴びるのはどのランナーか。都庁前からビッグサイトまでの42.195キロを巡るドラマの主役は、28日に決定する。

 

(文・写真/杉浦泰介)