4日、ロンドン五輪男子マラソンの国内選考会を兼ねた「第65回福岡国際マラソン」が、福岡・平和台陸上競技場を発着点に行われ、一般参加のジョセファト・ダビリ(ケニア、小森コーポレーション)が2時間7分36秒で優勝した。注目の“市民ランナーの星”川内優輝(埼玉県庁)は2時間9分57秒で日本人トップの3位に入った。メダルを獲れば五輪代表内定とされた今夏の世界陸上韓国・テグ大会では該当者がいなかった。そのため、五輪代表選手は世界陸上での上位入賞者、そして今大会を含めた国内3大会(2月・東京マラソン、3月・びわ湖毎日)の結果からかんがみて、活躍が有力視される選手が選ばれる。
 5キロを15分に設定したペースメーカーに引っ張られ、レースは序盤から20人の先頭集団を形成し、5キロの通過タイムは15分05秒。8キロを過ぎたところで先頭グループが縦長になり始め、川内は集団の前方に位置していた。しかし、川内は14キロ過ぎで先頭集団の後方に下がる。さらに18キロを過ぎるとペースアップした先頭集団から徐々に遅れ始め、レース中間点で完全にトップグループから脱落した。だが、同時に遅れをとった2人の選手と第2グループを形成し、先頭集団の背中を追い続ける。

 一方、トップ争いは25キロでペースメーカーが外れると、26キロの給水地点でダビリがスパートをかけた。一気に他の選手を引き離し、独走状態。ケニアのジェームス・ムワンギ(NTN)もペースを上げて単独2位の位置をキープする。先頭集団で粘っていた今井正人(トヨタ自動車九州)、前田和浩(九電工)ら3人が3位グループを形成した。

 30キロを過ぎると今井と前田がペースを上げ、3位グループから1人が脱落。日本人トップ争いは2人に絞られたと思われた。しかし、8位でレースを展開していた川内が、驚異の追い上げを見せる。3位グループに35キロで11秒差に迫ると、さらに差を縮めて36キロでついに今井、前田を追い抜いた。今井、前田も必死に食らいつき、三つ巴の3位争いとなる。

 そして、川内が38キロの給水地点でスパートし、他の2人を引き離しにかかった。それに前田はついていくことができなかったが、今井が粘り強くついていく。39.5キロでは川内、今井が抜きつ抜かれつの熾烈な競り合いを繰り広げた。だが、40キロ過ぎで川内が再びスパートをかける。今度はしっかりと今井との差を広げ、そのまま日本人トップでフィニッシュを果たした。

 ゴール後は今や恒例となった係員に抱きかかえられる川内の姿があった。タイムは2時間9分57秒と自己記録には及ばなかった。しかし、出場するすべてのレースで全力を出し切る走りを今回の福岡でも披露した川内。今年の東京マラソンで彗星のごとく現れた“市民ランナーの星”が、夢の五輪へ大きく、そして確かな一歩を踏み出した。

 上位の成績は以下のとおり。

1位 ジョセファト・ダビリ (ケニア、小森コーポレーション) 2時間7分36秒
2位 ジェームス・ムワンギ (ケニア、NTN) 2時間8分38秒
3位 川内優輝 (埼玉県庁) 2時間9分57秒
4位 今井正人 (トヨタ自動車九州) 2時間10分32秒
5位 ドミトリー・サフロノフ (ロシア) 2時間11分29秒
6位 前田和浩 (九電工) 2時間11分46秒
7位 ドミトロ・バラノフスキー (ロシア) 2時間12分08秒
8位 マーティン・デント (オーストラリア) 2時間12分23秒
9位 リドゥアヌ・ハルーフィ (モロッコ) 2時間13分40秒
10位 アレクセイ・ソコロフ (ロシア) 2時間14分00秒