アフガニスタン戦とシリア戦の2試合を、あらためてビデオで見直してみた。あらためて感じたのは、岡崎の存在感である。高校卒業時、名うての目利きでもある恩師にプロ入り自体を反対された選手が、日本はおろかプレミアでも注目される存在になるのだから、つくづくサッカーの未来はわからない。

 

 おそらく、来るべき最終予選でも、岡崎が攻撃陣の軸となるのは間違いない。ただ、これ以上彼への依存度が高くなってしまうようでは、最終予選はともかく、本大会での躍進はかなり難しいものになるだろう。

 

 岡崎が所属するレスターは、大方の……というかほぼすべての評論家やファンの予想を覆し、リーグ戦残り7試合の段階でいまだ首位を走っている。2位との勝ち点差は5。過去、この時期にこれだけの差をつけていたチームは、すべてそのまま逃げきっているという。レスターというチームの歴史、規模、予算などを併せ考えると、空前絶後の大番狂わせなるか、といったところである。

 

 もちろん、その中で岡崎が果たした役割は大きい。現地メディアの評価も極めて高いと聞く。だが、海外で自国民が活躍すると舞い上がりがちな日本人としては肝に銘じておかなければならないこともある。仮にレスターが優勝し、岡崎の評価がさらに高まったとしても、MVPは他にいる、ということである。

 

 今季ここまで、岡崎がレスターのために奪った得点は5。プレミア1年目ということを考えれば必ずしも悪い数字ではないが、19点をあげイングランド代表にも抜擢されたバーディーや、ハリルホジッチ監督もよく知るアルジェリア代表マフレズ(16点)に比べると、やはり見劣りはする。レスターというシンデレラ・ストーリーの一員だからといって、岡崎に過大な期待を寄せてしまうのは、短絡的かつ危険である。

 

 今回の日本代表2連戦。わたしがいささか失望したのは、岡崎のパートナーを組んだ選手についてだった。たとえば金崎。シュートを打ってアピールしようという姿勢は見えたが、決めることではなく、打つこと自体が目的になってしまっているように感じられるシュートもあった。より多くの点を決める選手は、より多くのシュートを放っているものだが、しかし、目的と手段を取り違えてはいけない。

 

 たとえば宇佐美。あれほど相手を圧倒した試合で、サイドバックの酒井高よりもシュートが少ないというのは理解しがたい。シリア戦での彼に欠けていたのは、金崎の気概だった。

 

 岡崎のレスターでのパートナー、バーディーは、7部リーグでもプレーしたことのある苦労人である。なぜそんな選手がプレミアで得点を量産しているのか。金崎と宇佐美にはぜひ真剣に考えてもらいたい。もって生まれた才ならば、2人の方がはるかに上なのだから。

 

<この原稿は16年3月31日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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