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(写真:メダル獲得の期待がかかる20キロの高橋<左>と50キロの谷井)

 18日、日本陸上競技連盟は東京・国立スポーツ科学センターで会見を開き、8月のリオデジャネイロ五輪に出場する競歩代表6名を発表した。男子20キロは日本選手権連覇の高橋英輝(富士通)と同2位の藤澤勇(ALSOK)、全日本競歩能美大会優勝の松永大介(東洋大)を選出。同50キロは昨年の世界選手権銅メダリスト・谷井孝行(自衛隊体育学校)と同4位の荒井広宙(自衛隊体育学校)、全日本競歩高畠大会を制した森岡紘一朗(富士通)が選ばれた。現時点での女子20キロの代表入りはなし。6月に開催されるトラック&フィールドの日本選手権後の理事会で審議にかけられる。

 

「メダル1、入賞2」という目標は実現可能な数字に見える。男子20キロでの世界記録、世界ランキングでの躍進。50キロではアジア競技大会金メダル、世界選手権では銅メダルを獲得した。上り調子の競歩界は陸上界をリードする存在となりつつある。

 

 男子20キロ世界記録保持者の鈴木雄介(富士通)、50キロの日本記録保持者の山崎勇喜(自衛隊体育学校)も代表には選ばれなかった。それでも20キロは今シーズンの世界ランキング上位3名が代表入りを果たすなど、充実の陣容だ。

 

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(写真:リオ五輪を「2020年につながる大会」とその先も見据えている日本陸連・今村競歩部長)

 20キロを引っ張るのは、鈴木の所属先の後輩にあたる高橋だ。2月の日本選手権で大会連覇を達成した。優勝タイム1時間18分26秒は今シーズン世界最高である。高橋は「雄介さんがオリンピックに出られないので、私が“日本の20キロを引っ張るんだ”という気持ちが大きいです」とエースとしての自覚も十分だ。昨年の日本選手権では鈴木を破って優勝するなど実力は着々と付けてきている。

 

「自分自身に期待している部分はすごく大きいです」。1年前の世界選手権代表発表会見では自信なさげだった高橋はもういない。報道陣に対する受け答えひとつを見ても、だいぶ印象が変わった。「学生の時は陸上に対してのイメージは楽しむというところにあった。今は結果を追求している」。責任と自覚を背負った23歳がリオの地を堂々と闊歩する。

 

 20キロはようやく力のある兎が本領を発揮し始めたのだとしたら、50キロのエースは亀のように着々と歩を進めてきた谷井だ。谷井は4大会連続の4度目の五輪となる33歳のベテラン。世界大会の常連ではあったものの、棄権や失格になるなど、ここまで歩みは決して楽なものではなかった。「苦しい時もありましたけど、光を信じて、ずっと我慢しながら続けてきた。それを乗り越えて時にこういうものがあって、続けてきたことを誇りに思います」と胸を張る。

 

 自分を信じて歩み続けた道の先に仁川での金メダル、北京での銅メダルがある。「僕はコツコツ積み上げてきた」。粘りが武器の谷井は、諦めずひた向きに歩いてきた結果で今に至る。「自分に才能があると思った事はないですし、積み上げてきたものが力になるタイプ。それがリオでかたちになりつつある」と語る。階段を着実に上がるように、一歩一歩積み重ねてきた谷井の集大成がリオで結実するのかもしれない。

 

 以下代表選手は次の通り。

 

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(写真:会見に出席した競歩代表メンバー<左から松永、高橋、谷井、森岡>)

◇男子競歩20キロ◇

高橋英輝(富士通) 初出場

松永大介(東洋大) 初出場

藤澤勇(ALSOK) 2大会連続2回目

 

◇男子競歩50キロ◇

谷井孝行(自衛隊体育学校) 4大会連続4回目

森岡絋一朗(富士通) 3大会連続3回目

荒井広宙(自衛隊体育学校) 初出場

 

※数字は五輪出場回数

 

(文・写真/杉浦泰介)