ボクシングのWBCダブル世界タイトルマッチが6日、東京国際フォーラムで行われ、スーパーフェザー級では王者の粟生隆寛(帝拳)が同級1位の挑戦者ターサク・ゴーキャットジム(タイ)を3−0の判定で下し、3度目の防衛を果たした。またバンタム級では王者の山中慎介(帝拳)が、同級4位の挑戦者で元スーパーフライ級王者のビック・ダルチニャン(オーストラリア)をこちらも3−0の判定で破り、初防衛を果たした。
<粟生、タフな相手に完勝>

 打っても打っても挑戦者のタイ人は倒れなかった。
「右も左も効いたと思ったけど……」
 王者もとまどう打たれ強さ。しかし、それでも最後まで打ち続けた。

 最初の4Rは五分五分の打ち合い。その後はボディからリズムをつかむ。右のジャブで挑戦者の顔は赤く腫れ、9R終盤には右フックが連続してヒット。続く10Rにはカウンターの左が顔面をとらえてターサクをぐらつかせ、その後の連打で棒立ちに近い状態にさせた。さらに11Rも左がアゴに入り、相手の上体が宙に浮きかけた。終盤の4Rはほぼフルマークのジャッジで、いつ倒しても不思議ではなかった。

 昨年11月の防衛戦ではランキング8位の挑戦者デビス・ボスキエロに大苦戦を喫した。手数が少なく、見せ場をつくれなかった。それだけに、この日は「主導権を握ることを常に考えていた」という。ダウンこそ奪えなかったものの、1位のタフな挑戦者をしっかりと退けた。 

 この日は奇しくも28歳の誕生日。「誕生日に殴りあうなんて」と苦笑いしつつ、「一生忘れられない日になる」と汗をぬぐった。勝利後のリング上からは両親に「もう少しボクシングを続けて心配させると思いますが、見守ってください」と感謝の言葉を送った。

 ファンのなかにはWBA世界スーパーフライ級王者・内山高志との王座統一戦を望む声が高まっている。粟生は「まだ自分自身の内容に納得できていない」と慎重な言い回しながら、最後は「お客さんの望むカードをしたい」と言い切った。KOダイナマイトの異名をとる内山と、天才的と言われるテクニックを持つ粟生。このまま防衛を重ねれば、両雄が拳を交える日が近い将来、訪れるかもしれない。