24日、リオデジャネイロ五輪日本代表選考会を兼ねた「第100回日本陸上競技選手権大会」が愛知・パロマ瑞穂スタジアムで開幕した。女子1万メートルは鈴木亜由子(日本郵政グループ)、男子1万メートルは大迫傑(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)、女子走り幅跳びは甲斐好美(VOLVER)が初優勝。揃って初の五輪代表内定を勝ち取った。男子1万メートルの村山紘太(旭化成)、男子棒高跳びの山本聖途(トヨタ自動車)、荻田大樹(ミズノ)は優勝こそ逃したが、日本陸上競技連盟が定めた派遣設定記録を既にクリアしており、選考基準である入賞以内に入ったため代表入りを決めた。注目の男子100メートルは桐生祥秀(東洋大)、山縣亮太(セイコーホールディングス)、ケンブリッジ飛鳥(ドーム)が決勝に進出。男子ハンマー投げの室伏広治(ミズノ)は64メートル74に終わり、入賞を逃した。

 

 愛知県出身の鈴木は、地元で初の五輪切符を掴んだ。女子1万メートル決勝に出場し、「亜由子」コールを背に受けてトラックを颯爽と駆け抜けた。

 

 鈴木は5月にアメリカで自己ベストの31分18秒16をマークした。派遣設定記録(31分23秒17)をクリアして臨んだ日本選手権。序盤から日本郵政グループの後輩・関根花観とともに先頭集団を引っ張ると、残り8周で完全にマッチレースの様相を呈した。2連覇中の西原加純(ヤマダ電機)を1周遅れにするほど2人の一騎打ちは加速する。

 

「チームメイトということは度外視して、“優勝するんだ”と強い気持ちで、意地で走りました」。鈴木は残り2周を切る前のホームストレートでスパートをかけて、1人抜け出した。関根との差をぐんぐん広げる。31分18秒73でフィニッシュし、2位の関根に4秒以上の差をつけた。

 

 24歳の鈴木は初の五輪代表内定に「地元で優勝し、オリンピックを決めれて良かったです」と喜んだが。一方で「関根花観ちゃんといいペースを刻みながらレースをつくることができてよかったと思っています。ただもう少し自分が引っ張る展開を予想していたので、そこは納得していない」と反省も忘れない。

 

 昨年の世界選手権では5000メートルに出場して9位。わずかに入賞に届かなかった。「これ(日本選手権優勝)をステップにもう1段階上を目指したい」。飛躍を誓った鈴木は5000メートルにもエントリーしており、トラック2冠を狙う。

 

 男子1万メートルは出場21人中、派遣設定記録(27分31秒43)を2人、派遣標準記録(28分0秒0)を8人が突破しているハイレベルな戦い。最大3つしかないリオ代表の椅子取りゲームを制したのは大迫と村山紘太だ。

 

 中盤までは8人の集団を形成していたが、残り6周で隊列が崩れた。抜け出したのは設楽悠太(Honda)。それに1万メートルの日本記録保持者・村山紘太、5000メートルの日本記録保持者・大迫が続く。三つ巴の争いから残り600メートルで大迫が飛び出した。

 

 大迫は1万メートルに出場した2013年、14年の日本選手権ではラストスパートで佐藤悠基(日清食品グループ)に敗れて悔しい思いをしている。昨年の5000メートルでは村山紘太に逆転負けを喫した。持ち前のスピードで過去の自分を振り切るように駆けていく。

 

 大迫は28分7秒44でゴール。ついに初優勝を手にした。2位に入った村山紘太とともにリオ五輪行きの切符を手にした。

 

 若き才能が輝いた一方で、41歳・室伏は劇的な復活劇を演じることはできなかった。2年ぶりの日本選手権は、3投目の試技を終えた時点で64メートル74と12位だった。室伏は上位8名までが進める後半に進めなかった。試合後のインタビューでは「体力の限界」と第一線から退く意向を明らかにした。

 

 アテネ五輪で日本人初の金メダルを獲得した。日本選手権では前人未到の20連覇を達成する偉業も成し遂げた。昨年は日本選手権を欠場し、連覇が途切れた。やはりブランクを取り戻すための時間などが足りなかったようだ。自己ベストからは20メートルも届かない記録で戦いを終えた。

 

 主な決勝結果は次の通り。

 

<男子1万メートル>

1位 大迫傑(ナイキ・オレゴン・プロジェクト) 28分7秒44

2位 村山紘太(旭化成) 28分16秒54

3位 設楽悠太(Honda) 28分17秒51

 

<男子棒高跳び>

1位 澤野大地(富士通) 5メートル60 ※順位は試技数による

2位 山本聖途(トヨタ自動車) 5メートル60

2位 荻田大樹(ミズノ) 5メートル60

 

<女子1万メートル>

1位 鈴木亜由子(日本郵政グループ) 31分18秒73

2位 関根花観(日本郵政グループ) 31分22秒92

3位 高島由香(資生堂) 31分35秒76

 

<女子走り幅跳び>

1位 甲斐好美(VOLVER) 6メートル36

2位 ヘンプヒル恵(中央大) 6メートル28

3位 清水珠夏(城北信用金庫) 6メートル23

 

※選手名の太字はリオデジャネイロ五輪代表に内定

 

(文/杉浦泰介)