10日(日本時間11日)、柔道の男子90キロ級決勝が行われ、ベイカー茉秋(東海大)がヴァルラム・リパルテリアニ(ジョージア)に優勢勝ちを収めた。五輪で同階級日本勢初の金メダルを手にした。女子70キロ級決勝は田知本遥(ALSOK)がユリ・アルベアル(コロンビア)に一本勝ちで、初優勝した。今大会日本女子初の金メダル獲得となった。

 

“鬼門”突破し、夢叶える

 

 男子90キロ級は旧86キロ級も含めて、五輪での日本人金メダリストはいない。まさに“鬼門”といえる階級に挑んだのが、アメリカ人のハーフであるベイカーだ。

 

 第1シードとしてリオの畳に上がったベイカーは、初戦で一本勝ちを収めて好スタートを切る。3回戦、準々決勝は技ありからの横四方固めで合わせ一本。順調に勝ち上がっていく。

 

 シドニー五輪で100キロ級を井上康生(現日本代表監督)が制した姿を見て、五輪で活躍することを夢見てきた。16年の時を経て、その機会を得たベイカー。準決勝は程訓釗(中国)が相手だ。

 

 残り1分のところでベイカーの技が決まったかに思われたが、逆に指導を受けてしまう。窮地に追い込まれても、ここから積極的に前へ出た。強引に組んでいって、大内刈りで有効を奪うと、そのまま流れるように袈裟固めに入る。相手はほぼ無抵抗状態。20秒が経過し、合わせ一本で決勝へと勝ち上がった。

 

 オール一本勝ちで迎えた決勝は世界選手権メダリストのリパルテリアニと対戦した。積極的に前へ出つつ、技を仕掛けた。そして2分17秒、ベイカーが大内刈りで有効を奪った。残り2分43秒が金メダルまでの長いカウントダウンとなった。消極的な姿勢と取られ、指導を2つ受けながらも最後は逃げ切った。

 

「ずっとオリンピックチャンピオンを夢見て、それが叶って良かった」。ベイカーは初出場初優勝を喜んだ。21歳とまだ若い。「東京オリンピックで2連覇したい」と本人も意欲十分だ。“鬼門”だった階級を“得意”階級に変えられるか。

 

 ノーシードからの初制覇

 

 世界選手権優勝経験もないノーシードの田知本が、ついに頂点に立った。

 

 ロンドン五輪に続いての出場となった田知本。4年前は準々決勝敗退に終わっており、「手ぶらで日本に帰るつらさを知った」とリベンジに燃えていた。

 

 1回戦こそ一本勝ちだったが、2回戦は世界ランキング1位のキム・ポリング(オランダ)という強敵を下した。田知本が「一戦一戦苦しかった」と振り返ったように、ポリングとの2回戦とケリタ・ズパンチッチ(カナダ)との3回戦はいずれも延長戦までもつれての優勢勝ちだった。

 

 力技で攻めてくる相手に対しても、田知本は下半身の粘りで踏ん張った。準決勝は序盤に大外刈りで技ありを奪う。残り時間は指導を2回受けたが、逃げ切った。決勝へとコマを進めた。

 

 決勝の相手はロンドン五輪銅メダリストのアルベアル。消極的な姿勢と取られ、序盤に指導を受ける。逆転を狙って、前へ出る田知本。2分19秒に谷落としで有効を奪うと、そのまま横四方固めで抑え込んだ。「絶対離さない」。目前にした世界タイトルを最後まで掴んで離さなかった。

 

(文/杉浦泰介)