12日(日本時間13日)、柔道の最終日が行われた。男子100キロ超級決勝は原沢久喜(JRA)が、ロンドン五輪王者のテディ・リネール(フランス)に優勢負け。リネールは連覇を達成した。原沢は銀メダルを獲得し、今大会で日本勢男子は全7階級で表彰台に上がった。女子78キロ超級は山部佳苗(ミキハウス)が3位決定戦で勝利。同種目での日本勢5大会連続のメダル獲得となった。決勝はエミリ・アンデオル(フランス)がロンドン五輪金メダリストのイダリス・オルティス(キューバ)を延長戦の末に下した。日本勢は全14階級中12階級でメダルを獲得(金3、銀1、銅8)し、過去最多となった。

 

 柔道王国復活を大いにアピールできたと言っていいだろう。1992年バルセロナ大会、2004年アテネ大会の10個を上回る最多のメダルを手に入れた。

 

 最終日の最重量級には男子100キロ超級の原沢と女子78キロ超級の山部が出場。いずれも初の五輪というフレッシュなコンビが大舞台に挑んだ。

 

 昨年の世界選手権銅メダリストの山部は2回戦、準々決勝をいずれも一本勝ちと順当に勝ち上がっていく。準決勝の相手は連覇を狙うオルティス。世界選手権を2度制しており、3度目の五輪と経験も豊富だ。

 

 勝ち方を知っているオルティスは、巧みな試合運びで山部のペースにさせない。残り1分を切り、試合が動いたのは山部とオルティスの指導の数が並んだ瞬間だった。直後にオルティスが投げをうつ。有効を取られ、そのまま逃げ切られた。一瞬のスキを突かれたのが痛かった。

 

「絶対にメダルを持ち帰る」と臨んだ3位決定戦では、山部は攻めた。ヨーロッパ女王のカイラ・サイト(トルコ)を相手に開始直後、大外刈りで技ありを取った。その後は守りに入り、1分46秒、3分34秒、3分51秒と指導を受ける。あと1つ指導を受けると反則負けになるが、何とか優勢勝ちを収めた。

 

 一方、1回戦から登場したのは原沢だ。世界選手権への出場歴もない24歳だが、北京五輪の石井慧以来の金メダル獲得を目指した。

 

 原沢は初戦で優勢勝ち、2回戦で一本勝ちを収めた。準々決勝は相手の指導4つにより、反則勝ち。北京五輪銀メダリストとの対戦となった準決勝では、大内刈りで有効を奪うなど攻め続けた原沢。消極的な相手は4つの指導を受けて、再び反則勝ちで決勝へとコマを進めた。

 

 対するのはリネール。前回の金メダリストで世界選手権は7連覇中と、約6年もの間無敗を誇る絶対王者である。初の五輪で最強の王者と対峙した。開始早々、組んだ時に首を抜いたため、原沢に指導が与えられる。1分過ぎにも原沢は指導を受け、リネールにリードを許した。

 

 初対決の原沢が不気味だったのか、リネールは一向に組もうとしない。原沢が奥襟を狙い、掴んでは振りほどかれる。その光景ばかり繰り返された。結局、試合終盤にリネールにも指導を与えられたが、指導の数でリネールが優勢勝ち。ロンドン五輪に続いての連覇を達成した。

 

 技を仕掛ける場面はほぼなく、組み手争いに終始した退屈な決勝戦。会場からはブーイングが聞かれるなど、リネールの勝ちだけにこだわった姿勢は褒められたものではなかったかもしれない。だが最強と謳われる王者に善戦した原沢が「勝ってこそ意味がある」と、残したコメントが印象的だった。そして「なかなか自分の組み手になるチャンスが少なく、組んだ時もチャンスをモノにできなかった」と、原沢が反省したように、攻め手に思い切りや工夫を欠いたのも事実だった。

 

 それでも原沢は最重量級での銀メダル獲得し、男子柔道のメダルリレーを締めたのは立派だった。チーム全体としても過去最低のメダル獲得数を記録したロンドン五輪の“惨敗”から見事に立ち直った。7日間のメダルラッシュは4年後の東京へ弾みがつく結果だったことは間違いない。これにあぐらをかかず、更なる高みを目指したい。

 

(文/杉浦泰介)